その日は朝から雨が降っており、私は駅の階段を急いでいました。会議の時間に遅れそうで、少し焦っていたのかもしれません。濡れた階段に足を取られたと思った瞬間、右足首が内側にぐにゃりと折れ曲がりました。鈍い衝撃とともに、これまで経験したことのないような熱い痛みが走り、私はその場に座り込んでしまいました。周囲の人の視線が痛いよりも、足首の痛みが勝り、何とか自力で立ち上がろうとしましたが、一歩踏み出した瞬間に膝から力が抜けてしまいました。結局、タクシーで近くの整形外科へ運ばれることになり、私の慌ただしい日常は突然停止しました。診断は中等度の捻挫。ギプスこそ免れましたが、しっかりとサポーターで固定され、二週間の歩行制限が言い渡されました。営業職である私にとって、歩けないことは仕事ができないことと同義です。しかし、会社へ連絡し、事情を説明してリモートワークへ切り替えてもらう中で、私は自分の体がいかに酷使されていたかに気づかされました。最初の三日間は、アイシングをしながら足を高く上げ、ただ天井を見て過ごしました。腫れが引いてくると、今度は足首の感覚が麻痺しているような、自分の足ではないような違和感が襲ってきました。一週間後、診察を受けると「リハビリを始めましょう」と言われました。病院のリハビリ室へ行くと、お年寄りから若いアスリートまで、多くの人がそれぞれの目標に向かって黙々とトレーニングをしていました。私は理学療法士の指導の下、タオルを指で手繰り寄せたり、バランスボードに乗ったりするリハビリを開始しました。仕事の合間を縫って、自宅でも教わったストレッチを続けました。驚いたのは、足首のトレーニングを始めてから、長年悩まされていた腰痛が少しずつ改善してきたことです。理学療法士さんによれば、私はもともと足首が硬く、それを腰で補っていたため、負担がかかっていたのだそうです。捻挫をしたことで、自分の全身のバランスがいかに崩れていたかを知ることになりました。二週間が経ち、ようやくサポーターを外して歩けるようになった日、私はいつも履いていた革靴が、実は自分に合っていなかったことにも気づきました。かかとがパカパカと浮き、足首が常に不安定な状態で歩いていたのです。私はすぐに、足首をしっかりとホールドしてくれる質の高いウォーキングシューズと、適切なインソールを新調しました。三週間後、久しぶりに客先へ向かうために駅の階段を歩いたとき、私はあの日の焦りとは違う、一歩一歩を地面にしっかりと着地させる確かな感覚を味わっていました。今回の捻挫は、私の生活を見直す大きな転換点となりました。歩くという当たり前の行為がいかに尊いか、そして自分の体をケアすることがいかに仕事の質を左右するか。足首の痛みは、そんな大切なことを教えてくれました。今では毎朝のストレッチが欠かせないルーティンとなり、私は以前よりも健康的な心身で、毎日を歩んでいます。