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町の診療所から中核病院へ紹介された日のこと
先日、私は長年通っている近所の内科クリニックで、少し気になる症状を相談しました。いつもは風邪や花粉症で薬をもらう程度の付き合いでしたが、その日は先生の表情が少し真剣になり、「一度、大きな中核病院で精密検査を受けましょう」と言われました。手渡されたのは一通の紹介状です。正直なところ、最初は「そんなに悪い病気なのだろうか」と大きな不安に襲われましたが、同時に中核病院という場所がどのような役割を果たしているのかを身をもって知る機会となりました。予約した日に訪れた中核病院は、ロビーからして圧倒されるような広さで、多くの診療科が整然と並んでいました。驚いたのは、検査のスピードと専門性です。クリニックでは数日かかるような血液検査の結果がその日のうちに出され、そのまま最新の高度な画像検査へと案内されました。担当してくれた専門医の先生は、クリニックの先生からの紹介状を読み込み、これまでの私の経過をすべて把握した上で、より深い専門的な視点から診断を下してくれました。この時、私は「医療のバトンタッチ」という言葉を実感しました。町の先生が私の日常を診て、異変を感じ取り、それを専門家が集まる中核病院へ繋ぐ。そして、中核病院での高度な治療や検査が終われば、また住み慣れた町の先生の元へ戻って管理を続けてもらう。このスムーズな連携こそが、現代の地域医療の形なのだと理解できました。中核病院は、決して敷居の高い、怖い場所ではありませんでした。むしろ、そこには地域のあらゆる「困りごと」を解決するための最先端の知恵と技術が集まっており、私たち住民が大きな病気に直面したときに、全力で支えてくれる心強い味方なのだと感じました。紹介状を持って受診することで、私のデータは正確に共有され、無駄な検査を省くこともできました。あの時、クリニックの先生が中核病院へ繋いでくれた判断に、今は心から感謝しています。自分一人で悩まずに、地域の医療ネットワークを信じて一歩踏み出すことの大切さを、今回の経験を通じて深く学びました。
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ぎっくり腰で病院を受診するタイミングと判断基準
ある日突然、雷に打たれたような衝撃とともに腰を襲うぎっくり腰は、正式名称を急性腰痛症と呼びます。多くの人は激痛に耐えながら、果たしてこのまま自宅で安静にしていれば良いのか、あるいは無理をしてでも病院へ行くべきなのかという選択を迫られます。一般的に、ぎっくり腰は数日から数週間で自然に軽快することが多いものですが、病院を受診すべきかどうかの判断基準を知っておくことは非常に重要です。まず、受診を急ぐべきケースとして挙げられるのは、足にまで響くような激しい痛みやしびれがある場合です。これは単なる筋肉や筋膜の損傷ではなく、椎間板ヘルニアなどが原因で神経が強く圧迫されている可能性を示唆しています。また、排尿や排便のトラブル、足の感覚が麻痺しているといった症状が見られる場合は、脊髄神経に重大な支障が出ている恐れがあるため、直ちに整形外科を受診しなければなりません。一方で、通常のぎっくり腰であれば、最初の二、三日は最も痛みが強く、その後は徐々に緩和していくのが一般的です。しかし、痛みが全く引かないどころか、日に日に増していくような場合や、発熱を伴う場合も注意が必要です。細菌感染による化膿性脊椎炎や、内臓疾患が原因で腰に痛みが出ている可能性も否定できないからです。病院を受診する最大のメリットは、こうした重大な疾患が隠れていないかを画像診断や専門医の診察によって明確にできる点にあります。レントゲン検査では骨折や骨の変形を確認でき、必要に応じてMRI検査を行うことで、神経の圧迫状態や軟部組織の異常を詳しく調べることが可能です。こうした確かな診断は、その後の治療計画を立てる上での安心感にもつながります。病院での治療は、痛みの緩和を目指す対症療法が中心となります。鎮痛剤や湿布の処方だけでなく、痛みが非常に強い場合にはトリガーポイント注射やブロック注射が行われることもあり、これらは劇的に痛みを軽減させる効果が期待できます。また、最近の医学的知見では、過度な安静は逆に回復を遅らせることが分かってきており、痛みの許容範囲内で日常生活を送ることが推奨されています。病院のリハビリテーション科では、理学療法士が適切な動き方やストレッチ、再発防止のための筋力トレーニングを指導してくれるため、専門的なアドバイスを受けることは早期復帰への近道となります。自己判断で湿布を貼って寝ているだけでは解決しない痛みがあるとき、医療機関という専門的な視点を取り入れることは、身体の健康を守るためだけでなく、精神的な不安を取り除く上でも極めて有効な手段と言えるでしょう。
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水疱瘡の潜伏期間からうつる期間まで医師が教える注意点
地域医療の最前線で多くの親子を診察している小児科医の立場から、水疱瘡という疾患における「時間軸」の理解がいかに重要であるかを、改めて強調しておきたいと思います。診察室で親御さんに病名を告げると、多くの方が「いつから保育園に行けますか」という質問をされますが、その答えの根拠となるのが「うつる期間」の医学的な定義です。水疱瘡をコントロールする上で最も厄介なのは、目に見える症状が出る前の「空白の二日間」です。感染した子供の体内では、ウイルスがまず上気道の粘膜で増殖し、その後血液に乗って全身へと運ばれます。このウイルス血症と呼ばれる状態の時、喉からは飛沫としてウイルスが放出されています。つまり、元気いっぱいに遊んでいるその瞬間が、実は周囲への感染源としてのピークの一つなのです。これが、水疱瘡がクラス全員に一気に広がる理由です。発疹が出てからは、今度は水疱の中の液体が新たな武器となります。この液体にはウイルスが濃縮されており、接触によって容易に感染を広げます。私たちが診察時に最も重視するのは、すべての水疱が「乾燥して硬いかさぶた」になっているかどうかです。中心部が少しでも窪んでいたり、ジュクジュクしていたりする場合は、まだ感染力を保持していると判断し、登園許可を出すことはできません。この判断は時に一日の差で明暗を分けますが、集団を守るためには妥協できないポイントです。また、親御さんが見落としがちなのが「潜伏期間」の罠です。水疱瘡の潜伏期間は通常十日から二十一日間と幅があります。もし上の子が発症した場合、下の子がうつっているかどうかは二週間経たないと分かりません。この長い待機期間は家庭にとって大きな負担となりますが、下の子に発疹が出始めたその時、すでにその子も二日前から「うつる期間」に入っていることを忘れてはいけません。ワクチンの二回接種が普及した現代では、典型的な水疱瘡ではなく、非常に軽い発疹が数個出るだけの「修飾水痘」が増えています。これを見逃して「ただの虫刺されだろう」と登園させてしまうことが、新たな集団感染の火種となります。たとえ水疱が一つであっても、それが水疱瘡であるならば、かさぶたになるまで休ませるというルールは変わりません。また、水疱瘡は治癒した後もウイルスが神経節に潜伏し、数十年後に帯状疱疹として現れるという、生涯にわたる物語の始まりでもあります。今のうつる期間を正しく管理することは、目の前の感染を防ぐだけでなく、将来の健康リスクを正しく理解することにも繋がります。医師としてのアドバイスは、まず予防接種を完遂すること、そしてもし発症した場合は、かさぶたという自然のバリアが完成するまで、焦らずに休息をとることです。それが、社会に対する最も誠実な対応であり、お子さんの体を守る最善の選択なのです。
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小児科医に聞く溶連菌による子どもの顔の発疹と適切な対処法
地域医療の最前線で多くの子どもたちを診察していると、冬から春、そして初夏にかけて非常に多く遭遇するのが溶連菌感染症です。この病気は非常に感染力が強く、保育園や幼稚園、学校などの集団生活の中で容易に広がっていきます。保護者の方からよく相談を受けるのが「熱が出てから顔が急に真っ赤になった」という訴えです。溶連菌感染症における顔の発疹は、非常に特徴的であり、私たち医師が診断を下す上での有力な視覚指標となります。多くの場合、頬を中心に鮮紅色の細かい発疹が密集し、顔全体が腫れぼったく見えることもあります。ここで注目すべきは、発疹が口の周囲には現れず、口元だけが白く抜けて見える現象です。これを医学用語で口周蒼白と呼びます。このサインが見られる場合、溶連菌が産生する毒素に対して皮膚が反応している可能性が非常に高く、私たちは即座に迅速検査を実施します。また、喉の所見も重要です。喉が真っ赤に腫れるだけでなく、点状の出血斑が見られたり、舌がいわゆるイチゴ舌の状態になっていたりすることが多く、これらが揃うと診断の確度はさらに高まります。治療において最も重要なのは、原因菌である溶連菌を完全に死滅させることです。ペニシリン系などの有効な抗生物質を投与すると、通常は二十四時間から四十八時間以内に熱が下がり、喉の痛みや顔の発疹も劇的に改善します。しかし、ここで最も陥りやすい罠が、症状が消えたからといって自己判断で投薬を止めてしまうことです。溶連菌は非常にしぶとい細菌であり、不十分な除菌はリウマチ熱や急性糸球体腎炎といった深刻な合併症を引き起こすリスクを高めます。特に腎炎は、喉の症状が治まってから二週間から四週間ほど経ってから血尿やむくみとして現れることがあるため、私たちは治療終了後にも尿検査を推奨しています。ご家庭での対処法としては、まず喉の痛みが強いため、食事は刺激の少ない、喉越しの良いものを選んであげてください。熱いものや酸味の強いものは避け、冷たいスープや豆腐、アイスクリームなどが比較的受け入れられやすいでしょう。また、顔や体の発疹は痒みを伴うことがありますが、掻き壊すとそこから二次的な細菌感染を起こす可能性があるため、爪を短く切り、必要に応じて痒み止めの外用薬を使用することをお勧めします。溶連菌は、家族内感染も非常に多い疾患です。お子さんの顔が赤く、喉の痛みを訴えている場合は、食器の共有を避け、こまめな手洗いを徹底してください。早期発見と、指示通りの完遂的な治療。この二つを守ることで、溶連菌感染症は決して怖い病気ではありません。お子さんの顔の変化を丁寧に見守ることが、家族全体の健康を守ることにも繋がるのです。
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階段の上り下りで膝が痛み出した私が整形外科へ行った記録
それは、ある寒い朝のことでした。いつも通り二階の寝室から階段を下りようとした瞬間、右膝の奥の方でピリッとした鋭い痛みが走りました。最初は「少し寝違えたのかな」程度に軽く考えていたのですが、その日を境に、駅の階段やちょっとした段差を通るたびに、膝がガクッと崩れるような不安感と痛みがつきまとうようになったのです。私はもともと病院が苦手で、湿布を貼っておけばそのうち治るだろうと高を括っていました。しかし、一週間が過ぎ、二週間が過ぎても痛みは引くどころか、夜寝ている時にも膝が重だるく疼くようになり、大好きな趣味であるウォーキングも中断せざるを得なくなりました。インターネットで「膝が痛い、何科」と検索すると、真っ先に出てくるのは整形外科という文字です。分かってはいたものの、やはり「老化ですね」と言われるのが怖くて、なかなか足が向きませんでした。しかし、友人に「膝を悪くして歩けなくなったら、それこそ一気に老け込んでしまうよ」と諭され、ようやく重い腰を上げて近所の整形外科クリニックを受診することにしたのです。病院の待合室は、私と同じように膝や腰を労わっている方々で溢れており、自分だけではないのだと少しだけ安心しました。名前を呼ばれて診察室に入ると、先生は丁寧に私の歩き方を観察し、膝の曲げ伸ばしや腫れの有無をチェックしてくれました。その後、レントゲン撮影を行いました。結果が出るまでの時間はとても長く感じましたが、戻ってきた診察室で先生が見せてくれた画像には、驚くほどはっきりと自分の膝の現状が写っていました。先生の説明によれば、私の右膝は「初期の変形性膝関節症」とのことでした。軟骨が少しずつ磨り減り、骨同士が近づくことで炎症が起きているというのです。ショックではありましたが、同時に「原因が分かった」という安堵感の方が勝っていました。先生は「まだ初期ですから、手術の必要はありません。筋力を鍛え、適切な治療を行えば、また元通りウォーキングも楽しめますよ」と力強く言ってくださいました。その日から、痛み止めの処方と並行して、理学療法士さんによるリハビリテーションが始まりました。膝を支える太ももの筋肉を鍛える簡単なエクササイズや、正しい歩き方の指導を受けるうちに、あんなに怖かった階段の昇降が少しずつ楽になっていくのを実感しました。もしあの時、意地を張って病院に行かずに放置していたら、今頃はもっと深刻な状態になっていたかもしれません。膝の痛みを感じた時、何科に行くべきか迷っている時間が一番もったいないのだと、今の私は断言できます。専門の病院で今の自分の状態を正確に知ることは、決して怖いことではなく、未来の自分を守るための大切な第一歩なのです。今ではまた、以前のように軽やかな足取りで散歩を楽しめるようになり、健康のありがたさを膝の痛みと共に噛み締めています。
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地域連携室を賢く使うことで変わる患者さんと家族の未来
病院の中にある地域連携室は、一見すると地味な部署に見えるかもしれませんが、そこをどれだけ賢く活用できるかによって、退院後の患者さんとご家族の人生の質は劇的に変わります。地域連携室を「何か困った時だけ行く場所」ではなく、「理想の生活を実現するための作戦会議室」として捉え直してみてください。優れた地域連携室のスタッフは、患者さんの強みを見つけ出すのが得意です。「麻痺はあるけれど、これくらいの補助具があればキッチンに立てるのではないか」「このサービスを使えば、週末だけは家族の介護負担を減らして、共倒れを防げるのではないか」といった、前向きな提案をしてくれます。賢く使うためのポイントは、自分たちの「これだけは譲れない」という価値観を最初に伝えておくことです。例えば、「どんなに大変でも最期は畳の上で過ごさせてあげたい」という強い希望や、「家族の仕事の関係で、平日の昼間は誰もいなくなる」という現実的な制約などです。情報を包み隠さず共有することで、地域連携室のスタッフは、その条件の中で最高の組み合わせを見つけ出すことができます。また、退院後に使える公的なお金の話、例えば傷病手当金や障害年金、生活保護などの手続きについて、どの窓口に行けばいいのかを整理してもらうのも賢い活用法です。自分たちだけで市役所のあちこちを回るのは大変な労力ですが、地域連携室で「まずここに行って、こう伝えてください」という指示書のようなものを作ってもらえれば、手続きのハードルはぐっと下がります。病院という場所は、とかく患者さんを「病気を持った人」として扱いがちですが、地域連携室だけはあなたを「地域で生活する一人の市民」として見てくれます。その視点を持つスタッフと繋がっておくことは、退院後の孤独を防ぐ最強の保険になります。地域連携室が保有しているネットワークは、あなたが退院した後も、地域のケアマネジャーや訪問看護師を通じて機能し続けます。つまり、地域連携室と繋がることは、地域全体の支援チームと繋がることを意味するのです。医療は日進月歩で進化していますが、人が人を支えるという本質は変わりません。地域連携室は、そのアナログで温かな支え合いを、科学的で組織的なシステムとして提供してくれる、現代医療の粋を集めた場所です。自分たちの未来をより良いものにするために、地域連携室というリソースを最大限に活用してください。扉を開けるその少しの勇気が、数ヶ月後、数年後のあなたの笑顔に直結しているのです。病院と街、そして現在と未来を繋ぐその部屋で、新しい生活の設計図を一緒に描いてみませんか。プロフェッショナルたちは、あなたが相談に来るのをいつでも待っています。
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息子の顔が真っ赤になり驚いた溶連菌感染症の闘病記録
その日の朝、五歳の息子が「喉が痛い」と言って起きてきたとき、私は単なる風邪の始まりだろうと軽く考えていました。しかし、昼過ぎに検温すると熱は一気に三十九度近くまで上がり、息子の顔色が普段とは全く違うことに気づきました。頬が異常に赤く、まるで強い日差しを長時間浴びた後のように火照っていたのです。慌てて明るい場所で観察すると、その赤みはただの紅潮ではなく、細かいブツブツが密集したような、ザラザラとした質感を持っていました。さらに驚いたのは、頬はこれほどまでに赤いのに、口の周りだけが不自然に白く、浮き上がって見えたことです。これが後で知ることになる溶連菌感染症特有の「口周蒼白」でした。喉をのぞき込むと、真っ赤に腫れ上がり、白い膿のようなものが付着しています。息子は唾を飲み込むのさえ辛そうで、大好きなゼリーも拒否するほどの痛みを訴えていました。夕方、這うようにして小児科へ駆け込むと、先生は息子の顔を一目見るなり「溶連菌かもしれないね」とおっしゃいました。喉の検査を済ませ、待合室で待つ十五分間は、一生のように長く感じられました。結果はやはり陽性。先生からは、この発疹がこれから全身に広がる可能性があること、そして何より大切なのは、処方された抗生物質を十日間、症状が消えても絶対に飲み切ることだと念を押されました。帰宅後、先生の言葉通り、発疹は胸からお腹、そして手足へと波が広がるように広がっていきました。息子は体中を痒がり、熱のせいもあって非常に不機嫌な一夜を過ごしました。しかし、抗生物質を二回服用した翌朝、奇跡のように熱が下がり、顔の激しい赤みも引き始めたのです。あんなに辛そうだった喉の痛みも和らぎ、少しずつ食欲も戻ってきました。発疹は数日で完全に消えましたが、本当の驚きはその一週間後にやってきました。治ったと思っていた息子の指先の皮が、日焼けの後のようにポロポロと剥け始めたのです。顔の皮膚も心なしかカサついており、再発したのかと慌てて病院に電話しましたが、これは溶連菌特有の「皮剥け」で、治っている証拠だと言われ、ようやく胸を撫で下ろしました。今回の経験を通じて痛感したのは、子どもの顔に出る発疹は、病気の正体を突き止めるための非常に重要な手がかりになるということです。単なる熱の花だと自己判断せず、いつもと違う顔の赤みや、口周りの白さに気づいたら、すぐに専門医の診断を仰ぐことの大切さを学びました。十日間の薬の服用を終えた後、尿検査で腎炎の合併症がないことを確認して、ようやく我が家の溶連菌騒動は幕を閉じました。あの真っ赤な頬を見た瞬間の動揺は今でも忘れられませんが、適切な知識と早めの受診があれば、正しく恐れる必要はないのだと実感しています。
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ぎっくり腰を早く治すための病院選びと治療の進め方
ぎっくり腰を発症した際、最も重要なのは、どのタイミングでどのような医療機関を選択するかという点にあります。痛みが発生してすぐに思い浮かぶのは整形外科や整骨院、整体院といった場所ですが、医学的な診断が必要な初期段階においては、まず整形外科という病院を選択するのが賢明です。その理由は、整形外科が唯一、医療行為として診察、検査、診断、投薬を行うことができる場所だからです。ぎっくり腰の裏には、稀に重大な病気が隠れていることがあります。圧迫骨折や椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などはもちろんのこと、稀に内臓疾患からくる腰痛も存在します。病院ではレントゲンや血液検査、必要であればMRIやCTなどの高度な画像診断を用いることで、痛みの真の原因を特定することができます。診断が確定すれば、次に重要となるのが治療の進め方です。急性期の治療において病院が提供する最大の武器は、迅速な除痛です。非ステロイド性抗炎症薬などの経口薬に加え、痛みの回路を一時的に遮断する神経ブロック注射や、筋肉の緊張を緩和するトリガーポイント注射などは、病院ならではの処置です。これにより、激しい痛みをコントロールし、日常生活への早期復帰を目指すことが可能になります。一方で、病院の役割は単に薬を出すことだけではありません。多くの整形外科には理学療法士が在籍しており、痛みが落ち着いてきた段階でのリハビリテーションが重要な役割を果たします。ぎっくり腰を繰り返す人は多く、その原因の多くは姿勢の悪さや筋力の低下、柔軟性の欠如にあります。プロの視点から自分の体の弱点を知り、正しい体の使い方を学ぶことは、再発防止において極めて高い効果を発揮します。また、病院選びのコツとしては、通いやすさはもちろんのこと、リハビリ施設が充実しているか、専門医が丁寧に説明してくれるかといった点も考慮すべきです。最近では、腰痛専門の外来を設けている病院も増えており、より専門的な知見に基づいた治療を受けることも可能です。ぎっくり腰という急なトラブルに対して、慌てずに対処するためには、かかりつけの整形外科を日頃から見つけておくことも一つの手でしょう。自分一人で痛みに耐えるのではなく、現代医学の力を賢く利用することが、結果として最も早く、そして確実に健康な日常を取り戻すための最短ルートとなります。
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中核病院を賢く利用するための紹介状の重要性
中核病院を利用する際に、私たちが必ず知っておかなければならないのが紹介状の仕組みです。多くの大規模な病院では、紹介状なしで受診しようとすると、通常の診察料とは別に数千円から一万円程度の「選定療養費」という追加費用がかかるようになっています。これは単なる手数料ではなく、中核病院が「高度な治療や救急を必要とする人」に集中できるように、軽症の人はまず地域のクリニックを受診してくださいという国の方針に基づく制度です。中核病院を賢く、かつ正しく利用するためには、まず近所の「かかりつけ医」を持つことが第一歩となります。かかりつけ医は、あなたの体質や過去の病歴を熟知した健康のパートナーです。そこで中核病院での受診が必要だと判断された場合、医師はあなたのこれまでの情報を集約した紹介状を書いてくれます。この紹介状があることで、中核病院の専門医は、一からすべてを調べ直す手間を省き、最初から本質的な問題にアプローチすることができます。これは診断のスピードを早めるだけでなく、患者自身の身体的・経済的な負担を軽減することにも繋がります。また、中核病院は急性期、つまり病気の勢いが強い時期の治療を得意としています。手術や集中治療によって状態が安定すれば、病院は次のステップ、例えばリハビリテーション専門の病院や、元のクリニックへの通院を提案します。この「退院」や「転院」は、病院から追い出されることではありません。むしろ、各段階で最も適切なケアを受けられる場所へ移動するという、非常に前向きなプロセスなのです。中核病院の役割は、地域の中で特別な技術を必要とする瞬間を担い、それ以外の時期は地域の他機関に任せるという、信頼に基づいた循環の上に成り立っています。私たち患者がこの仕組みを理解し、紹介状というパスポートを持って適切に中核病院にアクセスすることで、地域全体の医療の質が守られ、本当に助けが必要な人に医療が届くようになります。中核病院は、地域のみんなで支え、賢く使っていくべき貴重な公共の財産なのです。
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五歳の男児が溶連菌で顔に発疹を発症し回復するまでの事例研究
本症例は、集団生活を送る五歳の男児が溶連菌感染症に罹患し、特徴的な臨床経過を辿った事例である。患者は、保育園内で溶連菌の流行が報告されている最中に、突発的な三十九度四分の高熱と咽頭痛を発症した。発症当日の夕方には、顔面に微細な紅斑が出現し、急速に拡大。母親の観察によれば、頬部は鮮やかな赤色を呈していたが、口唇周囲のみ皮膚色が保たれており、典型的な口周蒼白の所見を呈していた。翌日、当院を受診した際の身体診察では、咽頭の高度な発赤と扁桃の腫大を認め、さらに舌尖部にイチゴ舌の兆候を確認した。迅速抗原検査の結果は強陽性であり、A群β溶血性連鎖球菌感染症と診断。直ちにアモキシシリン水和物の内服を開始した。本事例において特筆すべきは、発疹の広がりとその質変化である。顔面から始まった発疹は、受診当日の夜には頸部から体幹部へと波及し、触診にてサンドペーパーのような粗造感を確認できた。患児は軽度の掻痒感を訴えたが、冷却および処方された抗ヒスタミン薬の内服によりコントロール可能であった。抗菌薬開始から二十四時間後、体温は三十六度八分まで解熱。同時に顔面の紅潮も急速に減退し、口周蒼白の境界も不明瞭となった。咽頭痛も劇的に改善し、経口摂取が良好となったため、順調な回復過程に入ったと判断。しかし、発症から七日目の再診時、新たな皮膚所見が観察された。顔面の皮膚が軽度剥離し始め、さらに指先の爪囲から膜状に表皮が剥がれる落屑が認められた。これは溶連菌感染症の回復期に見られる生理的な変化であることを母親に説明し、無理に剥がさないよう指導を継続した。投与開始から十日間の抗菌薬内服を完遂。内服終了から二週間後の追跡調査における尿検査では、タンパク尿および血尿は認められず、糸球体腎炎の合併はないことが確認された。本事例は、溶連菌感染症の教科書的な経過を辿った標準的な症例であるが、顔面の特異的な発疹の分布や回復期の落屑といった所見は、保護者が病態を理解し、冷静に対処する上で非常に重要な観察ポイントであることを再認識させる。特に集団感染下においては、早期の顔面所見の把握が、迅速な診断と適切な抗菌薬投与への導入、そしてひいては合併症の予防に直結することを本症例は示唆している。