あの日、私は朝起きた瞬間の喉の重だるさと鼻のムズムズ感を、間違いなく「風邪の引き始め」だと確信していました。仕事が忙しく、前日の帰宅も遅かったため、過労で免疫力が落ちたのだろうと勝手に解釈したのです。すぐにドラッグストアへ向かい、総合感冒薬を購入して服用し、厚着をして早めに布団に入りました。しかし、数日が経過しても一向に症状が改善する気配がありません。むしろ、外に出るたびに鼻水は水のように溢れ出し、目は真っ赤に充血して、仕事に集中できないほどの痒みに襲われるようになりました。私は「今年の風邪はしつこいな」と考え、さらに強力な風邪薬に切り替え、栄養ドリンクを飲み続けました。しかし、熱を測っても三十六度台の平熱で、身体のだるさはあるものの、風邪特有の節々の痛みや悪寒はありませんでした。決定的な違和感を覚えたのは、雨が降った翌日に症状が劇的に悪化した時です。風邪であれば湿度が高い方が喉は楽になるはずなのに、その日はくしゃみが止まらず、頭がボーッとして、ついには仕事中に涙が止まらなくなってしまいました。心配した同僚から「それ、本当に風邪?花粉症じゃないの?」と指摘され、私は半信半疑ながらも耳鼻咽喉科を受診することにしました。診察室で先生は私の鼻の粘膜を一目見るなり「典型的なアレルギー反応ですね」と仰いました。血液検査の結果、私は数種類の花粉に対して強い陽性反応が出ていることが判明したのです。先生に処方された抗ヒスタミン薬を服用すると、あんなに頑固だった鼻水と痒みが、わずか数時間で嘘のように引いていきました。私がこれまでの数週間、風邪薬で対処しようとしていたのは、火事の現場で油を注いでいるようなものでした。風邪薬に含まれる成分は私の症状には的外れであり、むしろ副作用の眠気で作業効率を下げていただけだったのです。この経験を通じて私が学んだのは、自分の思い込みがいかに危険かということです。特に季節の変わり目は、症状が似ているからこそ、安易な自己判断は禁物です。水のような鼻水、連続するくしゃみ、そして何より目の痒み。これらが揃ったときは、どんなに身体がだるくても、まずはアレルギーの可能性を疑うべきでした。病院へ行くという一手間を惜しんだために、私は一ヶ月近くも不必要な苦しみを味わうことになりました。今では春が近づくと、症状が出る前に予防的な投薬を始めるようにしています。自分の身体と正しく向き合い、適切な医療の助けを借りること。それが、季節を楽しむための最低限の準備なのだと痛感しています。