足の裏の中央部分、いわゆる「土踏まず」に、歩いたり立ったりすると重だるい痛みや、ジンジンとした痛みを感じる。このような症状の背景には、足のアーチ構造の破綻が関わっていることが多くあります。私たちの足には、内側縦アーチ(いわゆる土踏まず)、外側縦アーチ、そして指の付け根部分にある横アーチという、3つのアーチ構造が備わっています。これらのアーチは、骨と靭帯、筋肉によって支えられており、歩行時の衝撃を吸収するバネのような役割と、体を安定させる土台としての役割を果たしています。このうち、内側縦アーチが潰れて、足の裏が平らになってしまう状態が「扁平足」です。子どもの頃の扁平足は、成長と共に自然にアーチが形成されることがほとんどですが、大人の扁平足(成人期扁平足)は、加齢や体重増加、長時間の立ち仕事、あるいは後脛骨筋というアーチを支える重要な筋肉の機能不全などによって、徐々にアーチが低下してくるものです。扁平足になると、衝撃吸収能力が低下するため、足の裏、特に土踏まずのあたりに、痛みや疲労感、だるさを感じやすくなります。また、足全体のバランスが崩れることで、外反母趾や足底腱膜炎、さらには膝痛や腰痛の原因となることもあります。土踏まずの痛みで、もう一つ考えられるのが、前述の「足底腱膜炎」です。足底腱膜は、かかとから指の付け根まで伸びているため、炎症はかかとだけでなく、土踏まずの中央部分にも起こり得ます。長時間の歩行やランニングの後などに、土踏まずに痛みを感じる場合は、足底腱膜の過労による炎症が考えられます。土踏まずの痛みの診断と治療は、主に「整形外科」が担当します。診察では、足の形を観察し、体重をかけた時とそうでない時のアーチの状態を比較したり、レントゲン撮影で骨の配列を確認したりします。治療の基本は、足のアーチを適切にサポートすることです。自分の足に合ったアーチサポート付きのインソール(足底挿板)を作成し、靴の中に入れる装具療法が最も効果的です。また、足の指をグーパーと動かす運動(タオルギャザーなど)や、アキレス腱のストレッチを行い、足裏の筋肉を鍛えて柔軟性を保つことも、症状の改善と予防に繋がります。
【土踏まず】扁平足や過労が招く痛みとアーチの役割