都内のIT企業に勤める人事担当のAさんは、毎年三月になるとオフィス内で蔓延する「体調不良者」の扱いに頭を悩ませていました。多くの社員がマスク越しに鼻をすすり、くしゃみを連発し、目は充血して覇気がない状態になります。Aさんが最も懸念したのは、これがインフルエンザや流行性の風邪による集団感染なのか、それとも単なる季節の花粉症なのか、という点です。もし風邪であれば出勤停止を含む強い措置が必要ですが、花粉症であれば業務の効率化や環境改善で対応できるからです。そこでAさんは、産業医のアドバイスを受けながら、社内の不調者の傾向を調査することにしました。まず、風邪と思われるグループには、共通して「発熱」と「倦怠感」が見られ、数日間の欠勤後に回復するという特徴がありました。一方で、多くの社員を占めていたのは、熱はないものの、一ヶ月以上も鼻水が止まらず、特に晴れた日の午後に症状が悪化し、目は赤く、頻繁に目薬を差しているグループでした。彼らは「身体は動くが、頭が回らない」と訴えていました。Aさんはさらに踏み込み、社内の空気清浄機のフィルターを確認したところ、想定以上の粉塵が蓄積していることが分かりました。調査の結果、不調者の約七割は花粉症であり、残りの三割が季節の変わり目の寒暖差による風邪や体調不良であったことが判明しました。この事例から、組織としての対応策が明確になりました。風邪の社員には早めの通院と十分な静養を促す一方、花粉症の社員に対しては、オフィスの出入り口での衣類払いの徹底、空気清浄機の増設、さらにはアレルギー薬の副作用による眠気を考慮した、重要会議の午前中設定などの配慮がなされました。社員側からも「単なる風邪だと思って無理をしていたが、花粉症だと認めて対策したことで、仕事が楽になった」という声が上がりました。風邪と花粉症は、個人の健康問題であると同時に、組織の生産性にも直結する課題です。この二つを混同せず、それぞれの原因に合わせた「ウイルス対策(隔離と休養)」と「アレルギー対策(遮断と投薬)」を使い分けることで、過酷な季節を乗り切るための職場環境が整いました。Aさんの取り組みは、単なる健康診断を超えて、社員が自分の身体の状態を正しく報告し、適切なサポートを受けるという健康経営のモデルケースとなったのです。
職場で広がる体調不良がウイルスかアレルギーか調査した事例