RSウイルス感染症は、一般的に年齢が上がるにつれて軽症化する傾向にあり、健康な5歳児であれば、多くは重篤な状態に陥ることなく回復します。しかし、「5歳だから絶対に安心」というわけでは決してありません。特に、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を持っている子どもや、心臓や肺に基礎疾患がある子ども、あるいは免疫不全の状態にある子どもは、5歳であっても重症化するリスクを常に念頭に置いておく必要があります。保護者の方が、家庭での看病中に注意深く観察し、重症化の兆候である「危険なサイン」を見逃さないことが何よりも重要です。最も注意すべきサインは、「呼吸の状態の悪化」です。RSウイルスは、細気管支炎を引き起こし、肺の奥の空気の通り道を狭くします。これにより、呼吸困難の症状が現れます。具体的には、以下の点に注意してください。①喘鳴(ぜんめい): 息を吐く時に、胸から「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という、苦しそうな音が聞こえる。②多呼吸・頻呼吸: 呼吸の回数が、明らかに普段よりも速く、浅くなっている。(安静時の呼吸数が1分間に40回を超える場合は要注意)③陥没呼吸: 息を吸う時に、鎖骨の上や、肋骨の間、みぞおちの部分が、ペコペコとへこむ。これは、呼吸をするために補助的な筋肉を必死に使っている証拠です。④チアノーゼ: 血液中の酸素が不足し、唇や顔色、爪の色が、青紫色や土色っぽく悪くなる。⑤無呼吸: 呼吸が一時的に止まってしまう。これらの呼吸困難のサインが一つでも見られた場合は、気管支拡張薬の吸入や、酸素投与といった専門的な治療が必要なため、夜間や休日であっても、ためらわずに救急外来を受診してください。また、呼吸困難に加えて、「水分がほとんど摂れず、ぐったりしている」「半日以上おしっこが出ていない」といった、強い脱水症状がある場合も、入院治療が必要となる可能性があります。5歳の子どものRSウイルスは、油断せず、常に呼吸状態を注意深く見守ることが、親の最も大切な役割です。