5歳の子どもがRSウイルス感染症と診断された場合、その治療と家庭でのケアはどのように進めればよいのでしょうか。まず、理解しておくべき最も重要な点は、RSウイルスそのものを直接退治する特効薬(抗ウイルス薬)は、現在のところ存在しないということです。したがって、医療機関での治療は、つらい症状を和らげるための「対症療法」が中心となります。病院では、咳を鎮めるための鎮咳薬、痰の切れを良くするための去痰薬、鼻水を抑えるための抗ヒスタミン薬、そして熱や痛みに対する解熱鎮痛薬などが、症状に応じて処方されます。気管支が狭くなり、ゼーゼーとした喘鳴がひどい場合には、気管支を広げるための吸入薬(気管支拡張薬)が用いられることもあります。細菌による二次感染(中耳炎など)を合併しない限り、抗生物質は効果がないため、通常は使用されません。治療の主役となるのは、実は病院での薬物療法以上に、家庭での適切な「支持療法」、すなわち丁寧なケアです。まず、最も重要なのが「水分補給」です。発熱や呼吸数の増加によって、体内の水分は普段以上に失われます。脱水を防ぐために、水やお茶、麦茶、あるいはイオン飲料などを、少量ずつ、こまめに飲ませるようにしましょう。次に、「鼻水の吸引」です。RSウイルスは大量の鼻水を産生するため、鼻づまりが子どもの呼吸をさらに苦しくさせます。特に、まだ自分でうまく鼻をかめない場合は、市販の鼻吸い器を使って、こまめに鼻水を吸い出してあげることが非常に重要です。これにより、鼻呼吸が楽になり、睡眠の質の改善や、中耳炎の予防にも繋がります。また、「加湿」も、喉や気管支の粘膜を潤し、咳を和らげるのに効果的です。加湿器を使用したり、濡れタオルを室内に干したりして、部屋の湿度を50~60%に保つようにしましょう。食事は、食欲がなければ無理に食べさせる必要はありません。水分補給を最優先し、ゼリーやプリン、スープなど、喉ごしの良いものを欲しがる時に与える程度で十分です。そして、何よりも大切なのが「安静と休養」です。体を休ませることが、ウイルスと戦う免疫力を高めるための最良の薬となります。