「この切り傷、跡が残らないように、できるだけきれいに治したい」。特に、顔や手足といった、人目につきやすい場所に切り傷を負ってしまった場合、誰もがそう願うはずです。このような、「機能的な回復」だけでなく、「見た目の美しさ(整容面)」を最大限に重視して傷の治療を行ってくれるのが、「形成外科」です。形成外科は、体の表面に生じた組織の異常や変形、欠損などに対して、機能的かつ整容的に、より正常に、より美しく修復することを専門とする外科系の一分野です。切り傷の治療、特に「縫合(ほうごう)」において、形成外科医は、皮膚の構造やしわの方向(皮膚割線)、そして将来的に傷跡がどのように変化していくかを熟知しており、それらをすべて計算に入れた上で、極めて繊細で丁寧な処置を行います。例えば、縫合する際には、単に傷口を寄せて縫うだけでなく、皮膚の深い層(真皮)を、溶ける糸で丁寧に縫い合わせる「真皮縫合」を行います。これにより、傷口にかかる張力を減らし、傷跡が後から幅広く伸びてしまったり、へこんでしまったりするのを防ぎます。そして、表面の皮膚は、できるだけ細い糸を使い、髪の毛ほどの細かさで、皮膚の縁がぴったりと合うように縫い合わせます。また、抜糸のタイミングも、傷跡の仕上がりを左右する重要な要素です。必要以上に長く糸を残しておくと、糸の跡(縫合糸痕)が残ってしまうため、適切な時期に見極めて抜糸を行います。さらに、形成外科では、縫合後のケアも重視します。抜糸後も、傷跡にかかる張力を減らすために、専用のテープ(マイクロポアテープなど)を数ヶ月間貼ることを指導したり、傷跡の赤みや盛り上がりを抑えるための内服薬や外用薬を処方したりすることもあります。また、不幸にも、すでに目立つ傷跡(瘢痕)や、ひきつれ(瘢痕拘縮)、ケロイドなどが残ってしまった場合でも、形成外科では、それらを修正するための手術(瘢痕形成術)や、レーザー治療、ステロイド注射など、多彩な治療オプションを持っています。もし、傷跡を少しでもきれいに治したいという強い希望があるなら、迷わず形成外科の扉を叩くことをお勧めします。