高齢になると、若い頃には感じなかったような身体の不調が現れやすくなります。その中でも、多くの人が経験するのが「めまい」です。特に、ぐるぐる回る回転性のめまいよりも、足元がおぼつかず、常に体がふわふわと揺れているような浮動性のめまいは、高齢者によく見られる症状です。しかし、「歳のせいだろう」と安易に自己判断してしまうのは非常に危険です。高齢者のふわふわめまいには、加齢による生理的な機能低下だけでなく、治療を要する病気が隠れている可能性が少なくないからです。まず考えられるのが、脳血管障害のリスクです。動脈硬化が進行している高齢者では、脳の血流が悪化しやすく、一過性脳虚血発作(TIA)や、小さな脳梗塞(ラクナ梗塞)がめまいの原因となっていることがあります。ふわふわ感に加えて、軽いしびれや喋りにくさを伴う場合は特に注意が必要で、重大な脳卒中の前兆である可能性も否定できません。また、加齢に伴う血圧調整機能の低下も一因です。特に、起立性低血圧は、立ち上がった際に血圧が急激に下がり、脳への血流が一時的に不足することで、ふわふわとしためまいや立ちくらみを引き起こします。服用している薬の副作用も無視できません。特に、血圧を下げる降圧剤や、精神安定剤、睡眠薬など、複数の薬を服用している場合、その相互作用や副作用としてめまいが現れることがあります。お薬手帳を持参し、かかりつけ医や薬剤師に相談することが重要です。さらに、視力の低下や、足の裏の感覚が鈍くなること、筋力の低下といった加齢による身体機能の変化が複合的に絡み合い、体のバランスを保ちにくくなることも、ふわふわ感に繋がります。これらのめまいは、転倒のリスクを著しく高めるという点で特に危険です。高齢者の転倒は、大腿骨骨折などの重篤な怪我に繋がり、それが原因で寝たきりになってしまうケースも少なくありません。ご自身やご家族にふわふわとしためまいが見られる場合は、「歳のせい」と片付けずに、まずはかかりつけの内科や、耳鼻咽喉科、神経内科などを受診し、原因をきちんと調べてもらうことが、健康で安全な生活を維持するために何よりも大切です。
見過ごさないで。高齢者のふわふわめまいに潜む危険