ある日の夜、突然襲ってきた激しい胸の痛みに、私は「死の恐怖」を感じました。心臓をギュッと握りつぶされるようなその感覚に、真っ先に思い浮かんだのは心筋梗塞でした。パニックになりながらも救急車を呼び、運び込まれたのは循環器内科の専門病院でした。しかし、心電図も血液検査も心臓超音波検査も、結果はすべて「正常」。医師からは「心臓には全く問題ありません」と告げられ、胸を撫で下ろすと同時に、強烈な疑問が残りました。心臓でないのなら、あの刺すような痛みは何だったのか。翌日、紹介されて訪ねたのは消化器内科でした。胸の痛みで何科へ行くか迷っていた私に、救急の医師が「食道の痙攣や激しい逆流でも、心筋梗塞のような痛みが出ることがありますよ」と教えてくれたからです。消化器内科で行った胃カメラ検査の結果、判明したのは激しい「びらん性食道炎」でした。胃酸が食道の粘膜をひどく焼き、それが神経を刺激して胸に激痛を走らせていたのです。私にとって、食道のトラブルといえばせいぜい胸焼け程度だろうという軽い認識しかありませんでしたが、実際にはこれほどまでの激痛を引き起こすのだという事実は大きな衝撃でした。それ以来、私は消化器内科の専門医の指導の下、食事制限と薬物療法を徹底しました。驚いたのは、食道という一つの管をケアするだけで、長年悩まされていた背中の凝りや、時折感じる息苦しさまでが解消されていったことです。食道は胸の中央を貫いており、その異常は周囲の神経を介して背中や肩にも痛みを飛ばすことがあるのだと教わりました。もしあの夜、心臓が原因でないと言われただけで満足し、食道の精査を怠っていたら、今頃はさらに悪化した炎症に苦しんでいたかもしれません。食道という器官の不調は、時に心臓や肺の病気と見分けがつかないほど劇的な症状を見せることがあります。だからこそ、原因不明の胸の痛みに対して、消化器科という視点を持つことの重要性を痛感しました。内視鏡という目を用いて、私の体内の「火事」を見つけ出してくれた専門医には感謝の言葉しかありません。病院へ行く際、何科がいいのかと悩みすぎるあまり受診を控えるのが一番のリスクです。胸や食道の不調に対しては、消化器科という心強いスペシャリストが控えていることを、実体験を持って広く伝えたいと思います。自分の身体の中で起きている「本当のこと」を科学の力で明らかにし、適切な治療を受けることは、身体だけでなく心の平穏を取り戻す唯一の方法でした。