水疱瘡の症状の中で、最も特徴的で、患者本人や家族を悩ませるのが、全身に出現する「発疹」です。この発疹の出現パターンと、時間と共に変化していく様子を詳しく見ていきましょう。発疹の出現は、多くの場合、体幹部であるお腹や背中、そして顔から始まります。最初に現れるのは、虫刺されのような、直径2~3mm程度の赤い小さなブツブツ(紅斑)です。この時点では、他の発疹症との区別は難しいかもしれません。しかし、水疱瘡の発疹の変化は非常に早く、この紅斑は、出現してからわずか半日から1日の間に、その中心部がみずみずしく透き通った「水ぶくれ(水疱)」へと変化します。この水疱は、まるで涙のしずくが皮膚に乗っているかのように見え、楕円形をしていることが多いです。水疱の周りは、赤く縁どられています。そして、この水疱期が、最も強いかゆみを伴う時期です。子どもは、この我慢できないかゆみのために、患部を掻きむしってしまいがちです。次に、水疱の中身は、徐々に白く濁っていき、膿を持った「膿疱(のうほう)」へと変わっていきます。この膿疱は、やがて自然に破れるか、乾燥してしぼんでいき、最終的には茶色っぽい「かさぶた(痂皮)」を形成します。このかさぶたが、自然に剥がれ落ちれば、通常は跡を残さずに治癒します。しかし、かゆみのために水疱を掻き壊してしまったり、かさぶたを無理に剥がしてしまったりすると、皮膚の深い層まで傷が及び、細菌による二次感染を起こしたり、クレーターのような瘢痕(はんこん)が残ってしまったりする原因となります。水疱瘡の発疹で最も重要な特徴は、これらの「紅斑・水疱・膿疱・痂皮」という異なるステージの発疹が、次々と出現してくるため、病気のピーク時には、体の同じエリアに、これらの新旧の発疹が同時に混在して見られることです。発疹は、最初に現れた体幹部や顔から、次第に頭皮(髪の毛の中)、手足の末端へと広がっていきます。口の中や、目の粘膜、性器といった粘膜部分にも、水疱ができて潰瘍(口内炎)になることもあり、食事や排尿時に痛みを伴うこともあります。
水疱瘡の発疹、出現場所と変化のプロセス