これまで見てきたように、「肩が痛い」という一つの症状の裏には、肩関節そのもののトラブルから、首の神経、内臓の病気、さらにはストレスまで、実に様々な原因が隠されています。そのため、的確な初期対応と、適切な診療科選びが、早期回復への鍵を握ります。では、実際に肩に痛みを感じた時、私たちはどのように考え、行動すればよいのでしょうか。ここでは、診療科を選ぶための思考プロセスを整理してみましょう。まず、Step 1として、「痛みのきっかけと性質」を確認します。「転んで手をついた」「スポーツで痛めた」といった明らかな怪我や、「腕を上げると痛い」「夜中にズキズキ痛む」といった、肩の動きに関連する痛みであれば、まずは運動器の専門家である「整形外科」が第一選択です。次に、Step 2として、「危険なサイン(レッドフラッグサイン)がないか」をチェックします。「胸の圧迫感を伴う、左肩への放散痛」であれば、心筋梗塞などを疑い、直ちに「循環器内科」へ。右上腹部痛を伴う右肩の痛みなら、胆嚢炎を疑い「消化器内科」へ。これらの場合は、夜間や休日であっても救急外来の受診が必要です。Step 3は、「肩以外の伴う症状」に注目することです。「首の痛みと共に、腕や手に広がるしびれ」があるなら、頸椎疾患を疑い「整形外科」または「脳神経外科」へ。「体のあちこちの関節が痛む」「発熱や倦怠感がある」なら、関節リウマチなどの自己免疫疾患を考え「リウマチ科」へ。「皮膚にピリピリとした痛みと発疹」があるなら、帯状疱疹を疑い「皮膚科」へ相談します。そして、Step 4として、これらの検査をしても「明らかな異常が見つからないのに、痛みが続く」場合です。強いストレスを自覚していたり、気分の落ち込みなどがあったりするなら、「心療内科」への相談も重要な選択肢となります。もし、これらのステップを踏んでも判断に迷う場合は、肩の痛みの原因として最も頻度が高い運動器系のトラブルをまず評価してもらうために、「整形外科」を最初の窓口とするのが最も合理的です。整形外科医が診察し、内科的疾患などが疑われれば、責任を持って適切な専門科へ紹介してくれます。つらい肩の痛みは我慢せず、この思考プロセスを参考に、早期に専門医の助けを借りるようにしてください。
まとめ。肩が痛い時、どう考え、どう行動すべきか