妊娠中のつわりや気分の浮き沈み、産後の抜け毛や倦怠感、そして更年期に訪れるホットフラッシュやイライラ。これらは女性ホルモンの大きな変動によって引き起こされる、女性特有の体の変化として広く知られています。しかし、これらの症状の裏に、実は甲状腺の機能異常が隠れているケースが少なくないことは、あまり知られていないかもしれません。女性の体と甲状腺機能は、非常に密接な関係にあります。甲状腺の病気、特にバセドウ病や橋本病といった自己免疫疾患は、免疫システムの異常によって引き起こされますが、女性ホルモンであるエストロゲンがこの免疫システムに影響を与えることが分かっています。そのため、女性ホルモンの分泌量が劇的に変化する妊娠、出産、更年期といったライフステージは、甲状腺疾患が発症したり、悪化したりするきっかけになりやすいのです。例えば、産後に極度の疲労感や気分の落ち込みが続く「産後うつ」と診断されたものの、実は甲状腺ホルモンが低下する「産後甲状腺炎」だったというケースは珍しくありません。症状が非常によく似ているため、見過ごされてしまうことがあるのです。また、更年期障害の症状とされる、動悸、多汗、体重減少、疲労感なども、甲状腺機能亢進症の症状と酷似しています。そのため、「もう年だから仕方ない」「更年期だから」と自己判断で片付けてしまい、適切な治療の機会を逃してしまう女性が多くいます。もし、あなたが今、こうしたライフステージの変化に伴う不調に悩んでいるのなら、一度、甲状腺の可能性を考えてみてください。産婦人科での定期検診の際に相談してみるのも良いでしょう。適切な血液検査を受ければ、甲状腺機能が正常かどうかはすぐに分かります。不調の原因が甲状腺にあると分かれば、ホルモンをコントロールする治療によって、生活の質を劇的に改善できる可能性があるのです。