日々の仕事や家事で慢性的な疲労を感じるのは、現代社会を生きる女性にとって珍しいことではありません。しかし、どれだけ休んでも抜けない倦怠感や、これまでとは明らかに違う体の重さを感じているなら、それは単なる疲れではなく、甲状腺からの重要なサインかもしれません。甲状腺ホルモンは、いわば体の活動を調整するアクセルのような役割を担っています。このホルモンが過剰に分泌される「甲状腺機能亢進症」、代表的なものにバセドウ病があります。この状態になると、体は常に全力疾走しているようなもので、心臓はドキドキと速く打ち、じっとしていても汗が止まらなくなります。食欲は旺盛なのに体重はどんどん減っていき、イライラしやすくなったり、手が震えたりすることもあります。一方で、ホルモンの分泌が不足する「甲状腺機能低下症」、代表例は橋本病です。この場合、体のエネルギーが枯渇した状態になり、強烈なだるさや眠気、むくみ、寒がり、便秘といった症状が現れます。食欲がないのに体重は増え続け、気力も湧かず、うつ病と間違われることも少なくありません。これらの症状は非常に多岐にわたるため、他の病気や更年期障害、あるいは単なるストレスのせいだと見過ごされがちです。もし、ここに挙げたような症状が複数当てはまり、数週間にわたって続いているのであれば、一度専門の医療機関を受診することを強くお勧めします。特に、首の付け根あたりに腫れやしこりを感じる場合は、早めに医師に相談すべきです。受診する科は、甲状腺を専門とする「内分泌内科」が理想ですが、まずはかかりつけの「内科」で相談し、血液検査を受けることから始めても全く問題ありません。自分の体を守るため、その小さな変化を見逃さないでください。