超高齢社会を迎えた日本において、HCU(高度治療室)が果たすべき使命は、かつての「単なる重症管理」から、より多層的で複雑なものへと変化しています。現在、HCUに入院する患者の多くは高齢者であり、彼らは単一の急性疾患だけでなく、糖尿病、高血圧、認知症、さらにはフレイル(虚弱状態)といった複数の慢性的な問題を抱えています。このような複雑な背景を持つ患者に対し、HCUでは単に数値を安定させるだけでなく、入院をきっかけとした生活機能の低下をいかに防ぐかという、極めて高度なマネジメントが求められています。ここで鍵となるのが「多職種連携」のさらなる深化です。HCUは今や、医師と看護師だけの場所ではありません。薬剤師は、多剤服用(ポリファーマシー)による副作用のリスクを急性期から評価し、点滴から内服へのスムーズな切り替えを提案します。管理栄養士は、侵襲を受けた体が回復するために必要なエネルギー量を精密に計算し、経管栄養や経口摂取の内容を日々調整します。臨床工学技士は、複雑化する生命維持装置の保守点検を担い、常にベストな状態で機器が稼働することを保証します。理学療法士や作業療法士は、以前にも増して早期から介入し、廃用症候群を防ぐために、ベッドサイドでの筋力維持活動を徹底します。そして、近年特に注目されているのが、MSW(医療ソーシャルワーカー)の早期介入です。高齢患者の場合、HCUにいる段階から、退院後の生活環境や介護サービスの調整を考え始めなければ、スムーズな社会復帰が困難になるからです。また、倫理的な側面においても、HCUの役割は重みを増しています。どこまでの高度な治療を行うことが、その患者さん自身の尊厳や人生観に合致するのか。意識がない、あるいは判断能力が低下した患者さんに代わって、家族と医療チームが対話を重ねる「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」の場としても、HCUは機能し始めています。最新の医療技術を駆使して命を救う一方で、その命が「どのように生きたいか」を問い直す。この、相反するようにも見える二つの課題を同時に抱え、解決の道を探るのが、現代のHCUという現場なのです。テクノロジーによる数値管理がどれほど進化しても、最終的には「人」と「人」との対話と信頼が医療の質を決定します。HCUという高度な環境が、冷たい機械の部屋ではなく、温かな再生の場であり続けるためには、多職種がそれぞれの専門性を発揮しつつ、一人の人間としての患者を丸ごと支えるという強い意志が不可欠です。これからの時代のHCUは、急性期医療の高度化を支えるインフラであると同時に、人間尊厳を守り抜く倫理の最前線として、その重要性をますます高めていくことになるでしょう。
超高齢社会におけるHCUの新たな使命と多職種連携の深化