「RSウイルスは、2歳までにほとんどの子どもが一度はかかる病気」とよく言われます。では、なぜ5歳の子どもが、再びRSウイルスにかかってしまうのでしょうか。その理由は、RSウイルスに対する免疫のつき方に、大きな特徴があるからです。結論から言うと、RSウイルスは、一度感染しても、生涯にわたって何度も「再感染」を繰り返すウイルスです。麻疹(はしか)やおたふくかぜのように、一度かかれば終生免疫が獲得できるウイルスとは、全く性質が異なります。RSウイルスに初めて感染すると、体はそのウイルスに対する抗体を作り出しますが、その免疫はあまり強力ではなく、また、長くは持続しません。そのため、数ヶ月から数年経つと、再び同じRSウイルスに感染してしまうのです。しかし、再感染を繰り返すたびに、症状は徐々に軽くなっていくのが一般的です。初めて感染する乳児期、特に生後6ヶ月未満では、細気管支炎や肺炎といった重篤な下気道感染症を引き起こすリスクが高いですが、2回目、3回目の感染となる幼児期以降では、症状は上気道(鼻や喉)にとどまり、普通の風邪と変わらない、あるいはごく軽い症状で済むことがほとんどです。5歳の子どもがRSウイルスにかかった場合、それは多くの場合、初めての感染ではなく、「再感染」であると考えられます。特に、保育園や幼稚園といった集団生活を送っている子どもは、毎年流行するRSウイルスに暴露される機会が多いため、知らず知らずのうちに何度も感染を繰り返しているのです。ただし、5歳児であっても、喘息の素因がある子どもや、免疫機能に問題がある子どもの場合は、再感染でも症状が重くなることがあるため、注意が必要です。また、RSウイルスには、A型とB型という、大きく分けて二つのタイプがあり、さらにその中でも細かく遺伝子型が分かれています。異なる型のウイルスに感染した場合は、免疫が十分に働かず、症状が比較的強く出る可能性も指摘されています。このように、RSウイルスは何度もかかるのが当たり前のウイルスです。そのため、一度かかったからと油断せず、流行シーズンには、手洗いやマスクの着用といった基本的な感染対策を、年齢に関わらず徹底することが大切です。