「適応障害」という言葉は、メディアなどで耳にする機会も増えましたが、その具体的な内容については、まだ十分に理解されていないのが実情です。適応障害とは、その名の通り、ある特定の、そして明確な「ストレスの原因」に対して、心や体、そして行動の面で、著しい苦痛や機能の障害が生じ、社会生活に支障をきたしてしまっている状態を指します。重要なのは、その不調の引き金となる「ストレスの原因」が、はっきりと特定できる、という点です。例えば、職場の異動や、過重な労働、人間関係のトラブル、あるいは、転校や、結婚、近親者との死別といった、人生の大きな変化などが、その引き金となり得ます。症状の現れ方は、実に様々で、一人一人異なります。精神的な症状としては、憂鬱な気分や、涙もろさ、将来への過剰な不安感、焦燥感、そして何事にも興味が持てなくなる、といったものが挙げられます。身体的な症状としては、不眠や、食欲不振、あるいは過食、頭痛、腹痛、動悸、めまい、そして全身の倦怠感などが現れることもあります。また、行動面での変化として、遅刻や欠勤が増えたり、人との交流を避け、引きこもりがちになったり、あるいは、普段はしないような、無謀な運転や、喧嘩っ早くなるといった、問題行動として現れることもあります。うつ病と混同されがちですが、適応障害の大きな特徴は、ストレスの原因となっている特定の状況や、出来事から離れると、症状が比較的速やかに改善する傾向がある、という点です。しかし、だからといって、決して「気合で治る」ような、甘い病気ではありません。放置すれば、症状が慢性化し、本格的なうつ病へと移行してしまう可能性も十分にあります。もし、あなたの心と体に、思い当たるサインが現れているのであれば、それは決して、あなたの心が弱いからではありません。専門家の助けを借りて、適切に休息し、対処すべき、体からの重要なSOSなのです。
そもそも適応障害とはどんな病気?