蕁麻疹は、ほとんどの場合、数日で治まる「急性蕁麻疹」ですが、中には、毎日のように出たり消えたりを繰り返し、その状態が6週間以上も続くケースがあります。これを「慢性蕁麻疹」と呼びます。子どもの慢性蕁麻疹は、大人に比べると頻度は低いですが、長引くかゆみは、子どもの睡眠や集中力を妨げ、生活の質(QOL)を大きく低下させます。慢性蕁麻疹は、特定の原因がなかなか見つからない「特発性」のものがほとんどです。食物アレルギーが原因であることは非常に稀で、背景には、自己免疫の異常(自分の体の成分に対して抗体ができてしまう)や、ストレス、生活習慣の乱れなどが複雑に関与していると考えられています。そのため、治療は、原因を追求すること以上に、症状をコントロールし、日常生活を快適に送ることを目標とします。治療の基本は、急性蕁麻疹と同様に、「抗ヒスタミン薬」の内服です。しかし、慢性蕁麻疹の場合は、症状が出た時だけ薬を飲むのではなく、症状がなくても、毎日決まった時間に薬を服用し続け、蕁麻疹が出ない状態を維持する「予防的内服」が重要となります。最初は標準的な量の抗ヒスタミン薬から開始し、効果が不十分な場合は、医師の判断で、薬の量を増やしたり(倍量投与)、種類の違う薬を組み合わせたりします。近年では、従来の抗ヒスタミン薬で効果が見られない、難治性の慢性蕁麻疹に対して、「オマリズマブ(商品名:ゾレア)」という注射薬も、小児への適応が拡大されました。これは、アレルギー反応の鍵となるIgEという抗体に作用する生物学的製剤で、高い効果が期待できます。薬物療法と並行して、悪化因子を見つけて避けることも大切です。「頭痛薬で蕁麻疹が悪化する」「疲れると出やすい」など、自分なりのパターンに気づくことができれば、それを避けることで、症状をコントロールしやすくなります。慢性蕁麻疹の治療は、数ヶ月から時には数年単位の、根気のいる付き合いになることもあります。焦らず、信頼できる皮膚科医やアレルギー専門医と二人三脚で、じっくりと治療に取り組むことが大切です。
慢性蕁麻疹とは?長引くかゆみとの付き合い方