現代社会を生きる私たちは、仕事や人間関係など、様々なストレスに常に晒されています。こうした精神的な負担が、身体的な不調として現れることは少なくありません。その代表的な症状の一つが「心因性めまい」です。耳鼻咽喉科や神経内科で検査をしても、耳や脳に明確な器質的異常が見つからない。にもかかわらず、ふわふわとした浮遊感や、ぐらぐらするような不安定感が続く。このような場合に、心因性めまいが疑われます。このタイプのめまいは、過度なストレス、不安、抑うつ状態などが引き金となり、自律神経のバランスが乱れることで発生すると考えられています。自律神経は、血管の収縮や拡張、血圧、心拍数など、私たちの意思とは関係なく体の機能をコントロールしている神経です。ストレスによってこの神経の働きが不安定になると、脳への血流が微妙に変化したり、平衡感覚を司る神経系に誤った情報が伝わったりして、めまいとして感じられるのです。心因性めまいの特徴として、症状の現れ方が状況によって変化しやすい点が挙げられます。例えば、特定の場所(満員電車や人混みなど)に行くと症状が悪化したり、強いプレッシャーを感じる場面でめまいが起きたりします。また、めまいだけでなく、動悸、息苦しさ、過呼吸、発汗、手足の震えといった、パニック障害に似た症状を伴うこともあります。治療の第一歩は、まず身体的な病気がないことを各種検査で確認することです。その上で、めまいの原因が心理的な要因にある可能性を本人も理解することが重要になります。治療法は、主に自律神経のバランスを整えるための薬物療法と、ストレスの原因と向き合うための心理療法が中心となります。抗不安薬や抗うつ薬が有効な場合もありますが、薬だけに頼るのではなく、カウンセリングを通じて自分のストレス対処法を見つけたり、リラクゼーション法(深呼吸、瞑想、ヨガなど)を日常生活に取り入れたりすることが根本的な改善に繋がります。もしあなたが原因不明のふわふわめまいに悩んでいるなら、それは体からの「少し休んで」というサインなのかもしれません。心と体の両面から、自分自身を労ってあげることが大切です。
ストレス社会が招くめまい。心因性めまいとは何か