訪問診療・看護・介護サービスの選び方と利用法

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  • かかとの骨に異常?疲労骨折と骨棘

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    かかとの痛みの原因が、腱膜やアキレス腱といった軟部組織だけでなく、かかとの骨(踵骨)そのものにある場合もあります。特に、スポーツを熱心に行っている人や、長時間の立ち仕事をしている人は、注意が必要です。その代表的な疾患が「踵骨疲労骨折」です。疲労骨折は、一度の大きな外力で骨が折れる通常の骨折とは異なり、骨の同じ場所に、繰り返し小さなストレスがかかり続けることで、骨に微細なひびが入ってしまう状態です。マラソンや長距離走、ジャンプを多用する競技の選手などが、トレーニング量を急に増やした時などに発症しやすいです。症状は、運動中や運動後のかかとの鈍い痛みとして現れ、初めは軽い痛みですが、運動を続けるうちに徐々に痛みが強くなり、やがて日常生活の歩行でも痛みを感じるようになります。かかと全体が腫れぼったくなり、かかとを横から挟むように圧迫すると、強い痛みが生じるのが特徴です(squeeze test)。診断は、レントゲンでは初期には変化が現れないことが多く、MRI検査が非常に有用です。治療は、原因となっている運動を完全に中止し、骨が癒合するまでの数週間から数ヶ月間、免荷(体重をかけないこと)あるいは荷重を制限することが絶対的に必要です。次に、中高年のかかとの痛みで、レントゲンを撮るとよく見つかるのが、「踵骨骨棘(しょうこつこつきょく)」です。これは、足底腱膜がかかとの骨に付着する部分で、腱膜に引っ張られる刺激が長期間続くことによって、骨がトゲのように異常増殖したものです。足底腱膜炎の患者さんによく見られますが、この骨棘そのものが、直接痛みの原因となっているわけではない、と考えられています。骨棘があっても全く痛みがない人もいれば、骨棘がないのに強い足底腱膜炎の症状がある人もいます。したがって、骨棘が見つかったとしても、治療の対象は、骨棘そのものではなく、その背景にある足底腱膜炎ということになります。

  • 水疱瘡の発疹、出現場所と変化のプロセス

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    水疱瘡の症状の中で、最も特徴的で、患者本人や家族を悩ませるのが、全身に出現する「発疹」です。この発疹の出現パターンと、時間と共に変化していく様子を詳しく見ていきましょう。発疹の出現は、多くの場合、体幹部であるお腹や背中、そして顔から始まります。最初に現れるのは、虫刺されのような、直径2~3mm程度の赤い小さなブツブツ(紅斑)です。この時点では、他の発疹症との区別は難しいかもしれません。しかし、水疱瘡の発疹の変化は非常に早く、この紅斑は、出現してからわずか半日から1日の間に、その中心部がみずみずしく透き通った「水ぶくれ(水疱)」へと変化します。この水疱は、まるで涙のしずくが皮膚に乗っているかのように見え、楕円形をしていることが多いです。水疱の周りは、赤く縁どられています。そして、この水疱期が、最も強いかゆみを伴う時期です。子どもは、この我慢できないかゆみのために、患部を掻きむしってしまいがちです。次に、水疱の中身は、徐々に白く濁っていき、膿を持った「膿疱(のうほう)」へと変わっていきます。この膿疱は、やがて自然に破れるか、乾燥してしぼんでいき、最終的には茶色っぽい「かさぶた(痂皮)」を形成します。このかさぶたが、自然に剥がれ落ちれば、通常は跡を残さずに治癒します。しかし、かゆみのために水疱を掻き壊してしまったり、かさぶたを無理に剥がしてしまったりすると、皮膚の深い層まで傷が及び、細菌による二次感染を起こしたり、クレーターのような瘢痕(はんこん)が残ってしまったりする原因となります。水疱瘡の発疹で最も重要な特徴は、これらの「紅斑・水疱・膿疱・痂皮」という異なるステージの発疹が、次々と出現してくるため、病気のピーク時には、体の同じエリアに、これらの新旧の発疹が同時に混在して見られることです。発疹は、最初に現れた体幹部や顔から、次第に頭皮(髪の毛の中)、手足の末端へと広がっていきます。口の中や、目の粘膜、性器といった粘膜部分にも、水疱ができて潰瘍(口内炎)になることもあり、食事や排尿時に痛みを伴うこともあります。

  • 内臓の病気が肩に痛みを引き起こす?内科・循環器科の役割

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    肩の痛みというと、筋肉や骨のトラブルを真っ先に考えがちですが、ごく稀に、全く別の場所にある「内臓」の病気が、関連痛(放散痛)として肩に痛みのサインを送ってくることがあります。これらは見逃すと命に関わる危険な病気である可能性もあるため、その特徴を知っておくことは非常に重要です。このような内臓由来の肩の痛みを疑う場合、受診すべきはそれぞれの臓器を専門とする「内科」系の診療科です。まず、最も警戒すべきが「心臓」の病気、特に「狭心症」や「心筋梗塞」です。これらの病気は、心臓に血液を送る血管が狭くなったり詰まったりすることで起こり、典型的な症状は胸の圧迫感や締め付けられるような痛みです。しかし、この痛みは、左肩や左腕、首、顎にまで広がることがあり、これを放散痛と呼びます。もし、階段を上るなど体を動かした時に、胸の不快感と共に、左肩に重苦しい痛みが現れ、休むと治まる、といった症状があれば、狭心症の可能性があります。安静にしていても痛みが続く場合は、心筋梗塞の危険性が高く、直ちに「循環器内科」を受診するか、救急車を呼ぶ必要があります。次に、「胆嚢」の病気、特に「胆石症」や「胆嚢炎」も、肩に痛みを引き起こすことがあります。胆嚢は右上腹部にありますが、その炎症の刺激が、横隔膜を介して右肩の神経に伝わり、右肩に強い痛みを感じることがあるのです。右上腹部痛や背部痛、発熱、吐き気といった症状と共に、右肩の痛みがある場合は、これを疑い、「消化器内科」を受診する必要があります。また、肺の病気、例えば肺のてっぺんにできた「肺がん(パンコースト腫瘍)」が、腕へ向かう神経を巻き込むことで、肩や腕に持続的な激しい痛みを引き起こすこともあります。長引く咳や血痰、体重減少などの症状を伴う場合は、「呼吸器内科」での精査が必要です。これらの内臓由来の痛みは、肩を動かしても痛みが変わらない、安静にしていても痛む、といった特徴があります。もし、通常の肩の痛みとは違う、何かおかしいと感じたら、内科医に相談するという視点を持つことが大切です。

  • 喉のブツブツで病院へ行くべき危険なサイン

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    喉にブツブツができて痛む時、多くは数日で自然に治るウイルス性の夏風邪ですが、中には重症化のサインや、緊急を要する危険な病気が隠れている可能性もあります。自己判断で様子を見るのではなく、以下に挙げるような「危険なサイン(レッドフラッグサイン)」が見られた場合は、直ちに医療機関を受診することが重要です。まず、最も警戒すべき症状が、「呼吸の異常」です。喉の腫れが非常に強く、「息がしにくい、呼吸が苦しい」「息を吸う時にゼーゼー、ヒューヒューという異常な音がする」「よだれが飲み込めず、口から垂れ流している」といった症状は、喉の奥にある喉頭蓋(こうとうがい)という部分に急激な炎症が起こる「急性喉頭蓋炎」の可能性があります。これは、気道が完全に塞がれて窒息する危険がある、極めて緊急性の高い状態です。次に、「水分補給が全くできない」場合です。喉の痛みのために、つばさえ飲み込めず、水分を一切受け付けない状態が続くと、特に乳幼児は容易に脱水症状に陥ります。「半日以上おしっこが出ていない」「唇がカサカサに乾いている」「ぐったりして活気がない」といった脱水のサインが見られたら、点滴による水分補給が必要なため、速やかな受診が必要です。また、「39度以上の高熱が3日以上続く」場合も、注意が必要です。ウイルス性の夏風邪の熱は、通常2~3日で解熱傾向になります。高熱が長引く場合は、細菌感染の合併や、川崎病など他の重篤な病気の可能性も考えなければなりません。さらに、「意識の状態がおかしい」場合も、極めて危険な兆候です。「呼びかけへの反応が鈍い、意識がもうろうとしている」「激しい頭痛と、繰り返す嘔吐がある」「けいれんを起こした」といった症状は、髄膜炎や脳炎といった、中枢神経系の合併症を強く疑うサインです。これらの症状が一つでも見られた場合は、夜間や休日であっても、ためらわずに救急外来を受診するか、救急車を呼んでください。ほとんどの場合は心配ない経過をたどりますが、万が一の事態に備え、これらの危険なサインを頭に入れておくことが、子どもの命と健康を守るために何よりも大切です。

  • 手足口病でも喉にブツブツができる?

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    夏風邪の代表格であるヘルパンギーナと手足口病は、どちらも同じエンテロウイルス属のウイルスが原因となることが多く、発熱や口の中の発疹といった共通の症状を持つため、しばしば混同されることがあります。手足口病でも、ヘルパンギーナと同様に、喉に痛みを伴うブツブツ(水疱や潰瘍)ができるため、注意深い観察が必要です。手足口病の最大の特徴は、その名の通り、口の中の発疹に加えて、「手のひら」や「足の裏、足の甲」、そして時には「お尻」や「膝」など、体の末端部分にも特徴的な発疹が現れることです。したがって、子どもが喉の痛みを訴え、口の中にブツブツを見つけたら、必ず手と足を入念にチェックすることが、鑑別のための最初のステップとなります。口の中の所見にも、若干の傾向の違いが見られます。ヘルパンギーナの発疹が、主に喉の奥の、のどちんこ周辺や上顎の柔らかい部分(軟口蓋)に限局してできるのに対し、手足口病の場合は、喉の奥だけでなく、舌や頬の内側の粘膜、歯茎といった、より口の前方の広範囲に発疹ができやすいという特徴があります。このため、ヘルパンギーナの痛みは主に飲み込む時の痛み(嚥下痛)ですが、手足口病では、舌や頬の潰瘍の痛みで、食べ物を口の中で動かすこと自体が困難になることもあります。どちらの病気もウイルス性であるため、治療法は、解熱鎮痛薬などを用いた対症療法が中心という点では同じです。しかし、手足口病の原因ウイルスの一つであるエンテロウイルス71は、稀に髄膜炎や脳炎といった重篤な中枢神経系の合併症を引き起こすことが知られており、ヘルパンギーナよりも、より注意深い経過観察が必要とされることがあります。喉のブツブツに加え、手足にも発疹を見つけた場合は、手足口病の可能性を考え、速やかに小児科を受診し、正しい診断を受けるようにしましょう。

  • 5歳でも重症化する?注意すべき危険なサイン

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    RSウイルス感染症は、一般的に年齢が上がるにつれて軽症化する傾向にあり、健康な5歳児であれば、多くは重篤な状態に陥ることなく回復します。しかし、「5歳だから絶対に安心」というわけでは決してありません。特に、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を持っている子どもや、心臓や肺に基礎疾患がある子ども、あるいは免疫不全の状態にある子どもは、5歳であっても重症化するリスクを常に念頭に置いておく必要があります。保護者の方が、家庭での看病中に注意深く観察し、重症化の兆候である「危険なサイン」を見逃さないことが何よりも重要です。最も注意すべきサインは、「呼吸の状態の悪化」です。RSウイルスは、細気管支炎を引き起こし、肺の奥の空気の通り道を狭くします。これにより、呼吸困難の症状が現れます。具体的には、以下の点に注意してください。①喘鳴(ぜんめい): 息を吐く時に、胸から「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という、苦しそうな音が聞こえる。②多呼吸・頻呼吸: 呼吸の回数が、明らかに普段よりも速く、浅くなっている。(安静時の呼吸数が1分間に40回を超える場合は要注意)③陥没呼吸: 息を吸う時に、鎖骨の上や、肋骨の間、みぞおちの部分が、ペコペコとへこむ。これは、呼吸をするために補助的な筋肉を必死に使っている証拠です。④チアノーゼ: 血液中の酸素が不足し、唇や顔色、爪の色が、青紫色や土色っぽく悪くなる。⑤無呼吸: 呼吸が一時的に止まってしまう。これらの呼吸困難のサインが一つでも見られた場合は、気管支拡張薬の吸入や、酸素投与といった専門的な治療が必要なため、夜間や休日であっても、ためらわずに救急外来を受診してください。また、呼吸困難に加えて、「水分がほとんど摂れず、ぐったりしている」「半日以上おしっこが出ていない」といった、強い脱水症状がある場合も、入院治療が必要となる可能性があります。5歳の子どものRSウイルスは、油断せず、常に呼吸状態を注意深く見守ることが、親の最も大切な役割です。

  • 喉のブツブツで何科に行けばいいの?

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    風邪をひいて喉にブツブツができた時、症状のつらさもさることながら、どの診療科を受診すればよいか迷うことも多いでしょう。適切な診療科を選ぶことは、正しい診断と効果的な治療への第一歩です。受診すべき診療科は、主に患者さんの年齢と、喉以外の症状の有無によって判断します。まず、患者さんが乳幼児や小学生といった「子ども」である場合は、第一選択となるのは、かかりつけの「小児科」です。小児科医は、子どもの病気全般の専門家であり、ヘルパンギーナや手足口病、溶連菌感染症といった、喉にブツブツができる子どもの代表的な感染症の診断と治療に最も精通しています。また、子どもの全身状態を評価し、脱水症状の有無や、稀な合併症の兆候を見抜く上でも、最も頼りになる存在です。発熱や咳、鼻水といった他の症状も含めて、総合的に診察してもらえるため、まずは小児科を受診するのが最も安心で確実な方法です。一方、患者さんが中学生以上の「大人」である場合は、「内科」または「耳鼻咽喉科」が主な選択肢となります。発熱や全身の倦怠感といった全身症状が強い場合は、まず「内科」を受診して、全身的な視点から診断してもらうのが良いでしょう。内科では、喉の診察に加え、必要に応じて血液検査や胸部レントゲン撮影なども行い、他の病気の可能性も探ってくれます。それに対して、喉の痛みや腫れ、飲み込みにくさといった、喉の局所症状が特に強い場合は、「耳鼻咽喉科」の受診がより適しています。耳鼻咽喉科医は、喉の専門家であり、ファイバースコープなどの専門的な器具を用いて、喉の奥の状態をより詳細に観察することができます。これにより、扁桃炎の程度や、稀な喉の腫瘍などとの鑑別を、より正確に行うことが可能です。また、喉の炎症を直接抑えるための吸入治療(ネブライザー)など、専門的な処置を受けられるというメリットもあります。迷った場合は、まずかかりつけの内科に相談し、必要であれば耳鼻咽喉科を紹介してもらう、という流れも良いでしょう。

  • 蕁麻疹の検査と治療、皮膚科・小児科での流れ

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    子どもが蕁麻疹で皮膚科や小児科を受診した場合、どのような検査や治療が行われるのでしょうか。その流れを知っておくことで、安心して診察に臨むことができます。まず、診断の基本となるのが、非常に詳細な「問診」です。医師は、①いつから発疹が出たか、②発疹の形や大きさ、出たり消えたりするか、③かゆみの程度、④発疹が出る前に、何かいつもと違うものを食べたか、薬を飲んだか、どこかへ出かけたか、⑤過去に同じような症状があったか、⑥アレルギー歴や家族歴はあるか、といったことを詳しく質問します。この問聞が、蕁麻疹の原因を推測する上で、最も重要な情報となります。次に、「視診」で、発疹の性状や分布を直接観察します。蕁麻疹の診断は、ほとんどの場合、この特徴的な皮膚症状と、詳しい問診によって下されます。原因として特定の食物アレルギーなどが強く疑われる場合には、「血液検査」で、その食物に対する特異的IgE抗体の量を測定することがあります。ただし、血液検査で陽性であっても、必ずしもそれが原因とは限らず、結果の解釈には専門的な判断が必要です。原因アレルゲンを特定するために、皮膚に直接アレルゲンエキスを垂らして反応を見る「皮膚プリックテスト」や、実際に疑わしい食物を少量ずつ摂取してみる「食物経口負荷試験」が、アレルギー専門医のもとで行われることもあります。治療の主役となるのは、「抗ヒスタミン薬」の内服です。蕁麻疹のかゆみや発疹の原因となる、ヒスタミンの働きをブロックすることで、つらい症状を効果的に抑えます。子どもにも安全に使える、眠気の少ない第二世代の抗ヒスタミン薬が、主に用いられます。症状が治まっても、医師の指示に従い、数日間は服用を続けることが、再燃を防ぐために重要です。塗り薬については、かゆみを和らげる効果は限定的ですが、掻き壊しを防ぐ目的で、弱いステロイド外用薬や、非ステロイド系のかゆみ止めが処方されることもあります。もちろん、アナフィラキシーのような重篤な症状がある場合は、アドレナリンの筋肉注射など、救急治療が最優先されます。

  • 「日中の受診を検討」すべき蕁麻疹のサイン

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    家庭でのケアで様子を見ていても、蕁麻疹の症状が改善しない、あるいは少し気になる点がある場合は、翌日以降の、日中の診療時間内に、皮膚科か小児科を受診することを検討しましょう。夜間や休日に、慌てて救急外来に駆け込むほどの緊急性はないものの、一度医師に診察してもらい、適切な診断と治療を受けた方が良いケースです。日中の受診を検討すべきサインは、主に「症状の持続時間」と「かゆみの強さ」です。まず、蕁麻疹は通常、個々の発疹(膨疹)は数時間で消え、長くても24時間以内には跡形もなく消えるのが特徴です。しかし、一つの発疹が24時間以上同じ場所に留まっている場合や、古い発疹が消えても、次々と新しい発疹が別の場所に出てきて、全体として2〜3日以上、蕁麻疹が出続けている場合は、医師の診察を受けた方が良いでしょう。特に、このような蕁麻疹が6週間以上も続く場合は、「慢性蕁麻疹」と呼ばれ、原因の特定や長期的な治療計画が必要となることがあります。次に、子どもが「かゆみを非常に強く訴えている」場合です。かゆみのために、夜も眠れない、イライラして集中できないなど、日常生活に支障が出ている場合は、我慢させる必要はありません。医療機関を受診すれば、かゆみの原因となるヒスタミンの働きを抑える「抗ヒスタミン薬」の内服薬を処方してもらえます。これにより、つらいかゆみを効果的に和らげ、掻き壊しによる悪化を防ぐことができます。市販のかゆみ止め塗り薬もありますが、効果は限定的であることが多く、原因によっては適さない場合もあるため、特に広範囲に蕁麻疹が出ている場合は、内服薬の方がはるかに有効です。その他にも、「蕁麻疹の原因に心当たりがなく、不安である」「過去にも蕁麻疹を繰り返しており、原因を特定したい」といった場合も、専門医に相談する良い機会です。受診する際は、いつから、どこに、どのような発疹が出たか、そして蕁麻疹が出る前に食べたものや、行った場所などをメモしていくと、診察がスムーズに進みます。スマートフォンのカメラで、発疹が最もひどかった時の写真を撮っておくことも、非常に有用な情報となります。

  • 蕁麻疹の原因、アレルギー性と非アレルギー性の違い

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    子どもの蕁麻疹の原因は、大きく分けて「アレルギー性」と「非アレルギー性」の二つに分類されます。どちらのタイプかを考えることが、適切な対応や、再発予防に繋がります。まず、「アレルギー性蕁麻疹」は、特定の物質(アレルゲン)に対して、体の免疫システムが過剰に反応することで起こります。アレルゲンが体内に入ると、マスト細胞という細胞から、ヒスタミンなどの化学伝達物質が大量に放出されます。このヒスタミンが、皮膚の血管を拡張させ、血液の成分(血漿)を血管の外に漏れ出させることで、赤みと盛り上がり(膨疹)、そして強いかゆみを引き起こすのです。原因となるアレルゲンとして最も多いのが、「食物」です。特に、卵、牛乳、小麦、そば、ピーナッツ、甲殻類(エビ・カニ)、果物などが代表的です。特定のものを食べてから、数分から2時間以内に蕁麻疹が出現するのが特徴です。その他、「薬物」(抗生物質や解熱鎮痛薬など)、「虫刺され」(ハチやアリなど)、「ラテックス(天然ゴム)」なども、アレルギー性蕁麻疹の原因となります。重症化すると、前述のアナフィラキシーショックを引き起こす危険性があるのが、このアレルギー性蕁麻疹です。一方、「非アレルギー性蕁麻疹」は、アレルギー反応を介さずに、様々な刺激が直接、あるいは間接的にマスト細胞を活性化させることで起こります。子どもの急性蕁麻疹の原因として、実は最も多いのが、この非アレルギー性のものです。その代表格が、「感染症」です。風邪や胃腸炎などのウイルスや細菌に感染した際に、体の免疫反応の一環として蕁麻疹が出ることがあります。また、日光を浴びることで起こる「日光蕁麻疹」、寒い空気に触れることで起こる「寒冷蕁麻疹」、温かいお風呂などで体温が上がることで起こる「温熱蕁麻疹」、皮膚をこすったり圧迫したりすることで起こる「機械性蕁麻疹」など、物理的な刺激が原因となる蕁麻疹も、このカテゴリーに含まれます。疲労やストレスが、蕁麻疹を誘発したり、悪化させたりすることも知られています。実際には、はっきりと原因が特定できない「特発性」の蕁麻疹が、全体の7割以上を占めるとも言われています。