喉の奥の白い水ぶくれはヘルパンギーナ
夏の時期に、突然の高熱と共に、喉に突き刺すような激しい痛みが現れ、口の中を覗くと、喉の奥の方に白い口内炎のようなブツブツがいくつかできている。これは、いわゆる「夏風邪」の代表格である「ヘルパンギーナ」の典型的な症状です。ヘルパンギーナは、主にコクサッキーウイルスA群などのエンテロウイルスによって引き起こされるウイルス性の感染症で、乳幼児を中心に流行します。ヘルパンギーナの喉のブツブツは、その経過に特徴があります。まず、喉の奥、特にのどちんこの周辺や上顎の柔らかい部分(軟口蓋)に、赤い小さな点々が現れます。そして、その中心部がすぐに1~2ミリ程度の小さな水ぶくれ(小水疱)に変化します。この水疱が、ヘルパンギーナの「白いブツブツ」の正体です。この水疱は非常に壁が薄くてもろいため、すぐに破れて、中心がえぐれた浅い潰瘍になります。この潰瘍が複数できるため、食べ物や飲み物、さらには唾液を飲み込むことさえ困難になるほどの、激しい痛みを引き起こすのです。溶連菌感染症のように喉全体が真っ赤になるというよりは、比較的正常な粘膜の中に、白い潰瘍が点在して見えるのが特徴です。ウイルスが原因であるため、抗生物質は効きません。治療は、高熱や喉の痛みに対する解熱鎮痛薬などを用いた対症療法が中心となります。何よりも大切なのは、喉の痛みによる脱水症状を防ぐことです。オレンジジュースなどの酸味の強いものや、熱いもの、味の濃いものは避け、ゼリーやプリン、アイスクリーム、冷たいスープなど、喉ごしが良く、刺激の少ないものを与える工夫が必要です。つらい症状は通常、1週間程度で自然に回復に向かいます。