喉の痛みと発熱に加えて、喉の奥、特に扁桃腺のあたりに、鮮やかな赤い色をした小さな点状のブツブツ(点状紅斑)が多数見られたら、それは「A群β溶血性連鎖球菌」という細菌による「溶連菌感染症」の典型的なサインかもしれません。この病気は、特に学童期の子どもに多く見られますが、大人も感染します。溶連菌感染症の喉の所見は非常に特徴的です。喉の粘膜が全体的に真っ赤に腫れあがり、しばしば扁桃腺には白い膿(白苔)が付着します。そして、舌にも特徴的な変化が現れます。最初は舌の表面に白い苔が生じますが、数日経つとその苔が剥がれ落ち、舌が赤く腫れてブツブツとした突起が目立つようになります。この状態が、見た目がイチゴに似ていることから「いちご舌」と呼ばれ、診断の重要な手がかりとなります。さらに、溶連菌が産生する毒素によって、喉の症状と前後して、体にも細かい赤い発疹が広がることがあります。これは「猩紅熱(しょうこうねつ)」と呼ばれ、特に首や胸、脇の下などから始まり、皮膚を触ると紙やすりのようにザラザラするのが特徴です。溶連菌感染症が疑われる場合、受診すべきは子どもなら小児科、大人は内科や耳鼻咽喉科です。医療機関では、喉の粘液を綿棒で採取する迅速診断キットで、10分程度で診断が可能です。この病気で最も重要なのは、細菌感染であるため、「抗生物質」による治療が不可欠であるという点です。処方された抗生物質を医師の指示通り、通常は10日間程度、最後までしっかりと飲み切ることが極めて重要です。症状が良くなったからといって自己判断で薬をやめてしまうと、生き残った菌が原因で、心臓に障害をきたす「リウマチ熱」や、腎臓に炎症が起こる「急性糸球体腎炎」といった、重篤な合併症を引き起こすリスクがあるからです。