夏風邪の代表格であるヘルパンギーナと手足口病は、どちらも同じエンテロウイルス属のウイルスが原因となることが多く、発熱や口の中の発疹といった共通の症状を持つため、しばしば混同されることがあります。手足口病でも、ヘルパンギーナと同様に、喉に痛みを伴うブツブツ(水疱や潰瘍)ができるため、注意深い観察が必要です。手足口病の最大の特徴は、その名の通り、口の中の発疹に加えて、「手のひら」や「足の裏、足の甲」、そして時には「お尻」や「膝」など、体の末端部分にも特徴的な発疹が現れることです。したがって、子どもが喉の痛みを訴え、口の中にブツブツを見つけたら、必ず手と足を入念にチェックすることが、鑑別のための最初のステップとなります。口の中の所見にも、若干の傾向の違いが見られます。ヘルパンギーナの発疹が、主に喉の奥の、のどちんこ周辺や上顎の柔らかい部分(軟口蓋)に限局してできるのに対し、手足口病の場合は、喉の奥だけでなく、舌や頬の内側の粘膜、歯茎といった、より口の前方の広範囲に発疹ができやすいという特徴があります。このため、ヘルパンギーナの痛みは主に飲み込む時の痛み(嚥下痛)ですが、手足口病では、舌や頬の潰瘍の痛みで、食べ物を口の中で動かすこと自体が困難になることもあります。どちらの病気もウイルス性であるため、治療法は、解熱鎮痛薬などを用いた対症療法が中心という点では同じです。しかし、手足口病の原因ウイルスの一つであるエンテロウイルス71は、稀に髄膜炎や脳炎といった重篤な中枢神経系の合併症を引き起こすことが知られており、ヘルパンギーナよりも、より注意深い経過観察が必要とされることがあります。喉のブツブツに加え、手足にも発疹を見つけた場合は、手足口病の可能性を考え、速やかに小児科を受診し、正しい診断を受けるようにしましょう。