訪問診療・看護・介護サービスの選び方と利用法

2025年8月
  • 喉の奥の白い水ぶくれはヘルパンギーナ

    医療

    夏の時期に、突然の高熱と共に、喉に突き刺すような激しい痛みが現れ、口の中を覗くと、喉の奥の方に白い口内炎のようなブツブツがいくつかできている。これは、いわゆる「夏風邪」の代表格である「ヘルパンギーナ」の典型的な症状です。ヘルパンギーナは、主にコクサッキーウイルスA群などのエンテロウイルスによって引き起こされるウイルス性の感染症で、乳幼児を中心に流行します。ヘルパンギーナの喉のブツブツは、その経過に特徴があります。まず、喉の奥、特にのどちんこの周辺や上顎の柔らかい部分(軟口蓋)に、赤い小さな点々が現れます。そして、その中心部がすぐに1~2ミリ程度の小さな水ぶくれ(小水疱)に変化します。この水疱が、ヘルパンギーナの「白いブツブツ」の正体です。この水疱は非常に壁が薄くてもろいため、すぐに破れて、中心がえぐれた浅い潰瘍になります。この潰瘍が複数できるため、食べ物や飲み物、さらには唾液を飲み込むことさえ困難になるほどの、激しい痛みを引き起こすのです。溶連菌感染症のように喉全体が真っ赤になるというよりは、比較的正常な粘膜の中に、白い潰瘍が点在して見えるのが特徴です。ウイルスが原因であるため、抗生物質は効きません。治療は、高熱や喉の痛みに対する解熱鎮痛薬などを用いた対症療法が中心となります。何よりも大切なのは、喉の痛みによる脱水症状を防ぐことです。オレンジジュースなどの酸味の強いものや、熱いもの、味の濃いものは避け、ゼリーやプリン、アイスクリーム、冷たいスープなど、喉ごしが良く、刺激の少ないものを与える工夫が必要です。つらい症状は通常、1週間程度で自然に回復に向かいます。

  • RSウイルスは再感染する?5歳児がかかる理由

    医療

    「RSウイルスは、2歳までにほとんどの子どもが一度はかかる病気」とよく言われます。では、なぜ5歳の子どもが、再びRSウイルスにかかってしまうのでしょうか。その理由は、RSウイルスに対する免疫のつき方に、大きな特徴があるからです。結論から言うと、RSウイルスは、一度感染しても、生涯にわたって何度も「再感染」を繰り返すウイルスです。麻疹(はしか)やおたふくかぜのように、一度かかれば終生免疫が獲得できるウイルスとは、全く性質が異なります。RSウイルスに初めて感染すると、体はそのウイルスに対する抗体を作り出しますが、その免疫はあまり強力ではなく、また、長くは持続しません。そのため、数ヶ月から数年経つと、再び同じRSウイルスに感染してしまうのです。しかし、再感染を繰り返すたびに、症状は徐々に軽くなっていくのが一般的です。初めて感染する乳児期、特に生後6ヶ月未満では、細気管支炎や肺炎といった重篤な下気道感染症を引き起こすリスクが高いですが、2回目、3回目の感染となる幼児期以降では、症状は上気道(鼻や喉)にとどまり、普通の風邪と変わらない、あるいはごく軽い症状で済むことがほとんどです。5歳の子どもがRSウイルスにかかった場合、それは多くの場合、初めての感染ではなく、「再感染」であると考えられます。特に、保育園や幼稚園といった集団生活を送っている子どもは、毎年流行するRSウイルスに暴露される機会が多いため、知らず知らずのうちに何度も感染を繰り返しているのです。ただし、5歳児であっても、喘息の素因がある子どもや、免疫機能に問題がある子どもの場合は、再感染でも症状が重くなることがあるため、注意が必要です。また、RSウイルスには、A型とB型という、大きく分けて二つのタイプがあり、さらにその中でも細かく遺伝子型が分かれています。異なる型のウイルスに感染した場合は、免疫が十分に働かず、症状が比較的強く出る可能性も指摘されています。このように、RSウイルスは何度もかかるのが当たり前のウイルスです。そのため、一度かかったからと油断せず、流行シーズンには、手洗いやマスクの着用といった基本的な感染対策を、年齢に関わらず徹底することが大切です。

  • まとめ。肩が痛い時、どう考え、どう行動すべきか

    知識

    これまで見てきたように、「肩が痛い」という一つの症状の裏には、肩関節そのもののトラブルから、首の神経、内臓の病気、さらにはストレスまで、実に様々な原因が隠されています。そのため、的確な初期対応と、適切な診療科選びが、早期回復への鍵を握ります。では、実際に肩に痛みを感じた時、私たちはどのように考え、行動すればよいのでしょうか。ここでは、診療科を選ぶための思考プロセスを整理してみましょう。まず、Step 1として、「痛みのきっかけと性質」を確認します。「転んで手をついた」「スポーツで痛めた」といった明らかな怪我や、「腕を上げると痛い」「夜中にズキズキ痛む」といった、肩の動きに関連する痛みであれば、まずは運動器の専門家である「整形外科」が第一選択です。次に、Step 2として、「危険なサイン(レッドフラッグサイン)がないか」をチェックします。「胸の圧迫感を伴う、左肩への放散痛」であれば、心筋梗塞などを疑い、直ちに「循環器内科」へ。右上腹部痛を伴う右肩の痛みなら、胆嚢炎を疑い「消化器内科」へ。これらの場合は、夜間や休日であっても救急外来の受診が必要です。Step 3は、「肩以外の伴う症状」に注目することです。「首の痛みと共に、腕や手に広がるしびれ」があるなら、頸椎疾患を疑い「整形外科」または「脳神経外科」へ。「体のあちこちの関節が痛む」「発熱や倦怠感がある」なら、関節リウマチなどの自己免疫疾患を考え「リウマチ科」へ。「皮膚にピリピリとした痛みと発疹」があるなら、帯状疱疹を疑い「皮膚科」へ相談します。そして、Step 4として、これらの検査をしても「明らかな異常が見つからないのに、痛みが続く」場合です。強いストレスを自覚していたり、気分の落ち込みなどがあったりするなら、「心療内科」への相談も重要な選択肢となります。もし、これらのステップを踏んでも判断に迷う場合は、肩の痛みの原因として最も頻度が高い運動器系のトラブルをまず評価してもらうために、「整形外科」を最初の窓口とするのが最も合理的です。整形外科医が診察し、内科的疾患などが疑われれば、責任を持って適切な専門科へ紹介してくれます。つらい肩の痛みは我慢せず、この思考プロセスを参考に、早期に専門医の助けを借りるようにしてください。

  • RSウイルスの治療法と家庭での正しいケア

    生活

    5歳の子どもがRSウイルス感染症と診断された場合、その治療と家庭でのケアはどのように進めればよいのでしょうか。まず、理解しておくべき最も重要な点は、RSウイルスそのものを直接退治する特効薬(抗ウイルス薬)は、現在のところ存在しないということです。したがって、医療機関での治療は、つらい症状を和らげるための「対症療法」が中心となります。病院では、咳を鎮めるための鎮咳薬、痰の切れを良くするための去痰薬、鼻水を抑えるための抗ヒスタミン薬、そして熱や痛みに対する解熱鎮痛薬などが、症状に応じて処方されます。気管支が狭くなり、ゼーゼーとした喘鳴がひどい場合には、気管支を広げるための吸入薬(気管支拡張薬)が用いられることもあります。細菌による二次感染(中耳炎など)を合併しない限り、抗生物質は効果がないため、通常は使用されません。治療の主役となるのは、実は病院での薬物療法以上に、家庭での適切な「支持療法」、すなわち丁寧なケアです。まず、最も重要なのが「水分補給」です。発熱や呼吸数の増加によって、体内の水分は普段以上に失われます。脱水を防ぐために、水やお茶、麦茶、あるいはイオン飲料などを、少量ずつ、こまめに飲ませるようにしましょう。次に、「鼻水の吸引」です。RSウイルスは大量の鼻水を産生するため、鼻づまりが子どもの呼吸をさらに苦しくさせます。特に、まだ自分でうまく鼻をかめない場合は、市販の鼻吸い器を使って、こまめに鼻水を吸い出してあげることが非常に重要です。これにより、鼻呼吸が楽になり、睡眠の質の改善や、中耳炎の予防にも繋がります。また、「加湿」も、喉や気管支の粘膜を潤し、咳を和らげるのに効果的です。加湿器を使用したり、濡れタオルを室内に干したりして、部屋の湿度を50~60%に保つようにしましょう。食事は、食欲がなければ無理に食べさせる必要はありません。水分補給を最優先し、ゼリーやプリン、スープなど、喉ごしの良いものを欲しがる時に与える程度で十分です。そして、何よりも大切なのが「安静と休養」です。体を休ませることが、ウイルスと戦う免疫力を高めるための最良の薬となります。

  • 【指の付け根】ピリピリ、ジンジン…モートン病の可能性

    医療

    歩いていると、足の指の付け根あたり、特に人差し指と中指の間、あるいは中指と薬指の間に、まるで小石を踏んでいるかのような、あるいは電気が走るような、ピリピリ、ジンジンとした鋭い痛みやしびれを感じる。このような症状がある場合、「モートン病(モートン神経腫)」の可能性があります。モートン病は、足の指へ向かう神経(趾間神経)が、指の付け根の骨(中足骨)の間で、靭帯などによって圧迫されることで生じる神経障害の一種です。神経が慢性的に圧迫されることで、神経そのものが腫れて「神経腫」というこぶのような状態になることから、この名前がついています。特に、つま先が細く、ヒールの高い靴を日常的に履く女性に多く見られるのが特徴です。ハイヒールを履くと、足の前方(前足部)に体重が集中し、指の付け根のアーチ(横アーチ)が低下して、神経が圧迫されやすくなるためです。また、扁平足や外反母趾がある人も、足の構造的なバランスが崩れているため、モートン病を発症しやすい傾向にあります。症状は、主に歩行時に現れ、靴を脱いで足を休ませると和らぐことが多いです。痛みやしびれは、圧迫されている神経が支配する隣り合った2本の指(例えば中指と薬指)に広がります。診断は、症状の詳しい問診と、特徴的な診察所見によって行われます。医師が、症状のある指の付け根の骨の間を、足の裏側から指で強く押すと、痛みやしびれが誘発される(ティネル様サイン)ことや、足の甲を横から圧迫すると痛みが増強されること(マルダー徴候)が、診断の重要な手がかりとなります。整形外科では、他の病気(疲労骨折など)を除外するためにレントゲン撮影を行ったり、超音波検査やMRI検査で神経の腫れを直接確認したりすることもあります。治療は、まず原因となる靴の着用を避けることが第一です。つま先にゆとりのある、ヒールの低い靴に変えるだけで、症状が劇的に改善することもあります。また、低下した横アーチをサポートするためのインソール(足底挿板)の使用も非常に有効です。痛みが強い場合には、消炎鎮痛薬の内服や、神経の圧迫を和らげるための局所麻酔薬やステロイドの注射が行われます。これらの保存的治療で効果がない難治性のケースでは、圧迫されている神経を剥離したり、神経腫そのものを切除したりする手術が検討されることもあります。

  • 登園・登校はいつから?RSウイルスの出席停止基準

    生活

    5歳の子どもがRSウイルス感染症にかかった時、共働きの家庭などでは、いつから保育園や幼稚園、小学校に登園・登校させられるのかが、非常に大きな関心事となります。この判断の基準となるのが、学校保健安全法という法律です。しかし、RSウイルス感染症は、インフルエンザや麻疹、おたふくかぜのように、「発症した後〇日を経過し、かつ、解熱した後〇日を経過するまで」といった、明確な出席停止期間が定められている第2種感染症には分類されていません。RSウイルスは、「その他の感染症」に分類されており、その登園・登校の基準は、一律に定められているわけではなく、子どもの全身状態によって判断されることになります。では、具体的な登園・登校再開の目安は、どのように考えればよいのでしょうか。厚生労働省のガイドラインなどでは、登園・登校の目安として、「咳などの呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと」が挙げられています。つまり、主な症状である激しい咳が落ち着き、熱もなく、普段通りに食事や水分が摂れ、活気がある状態になれば、集団生活に戻ることが可能と判断されるのです。ここで注意が必要なのが、RSウイルスの感染力(他の人にうつす力)についてです。ウイルスは、症状が出始める2~3日前から排出し始め、症状が出ている間が最も感染力が強くなります。そして、症状が軽快した後も、1~3週間程度は、気道からウイルスが排出され続けるとされています。このため、完全にウイルスがいなくなってから登園する、というのは現実的ではありません。だからこそ、登園の目安が「全身状態」に置かれているのです。実際には、多くの保育園や幼稚園、学校では、園や学校独自のルールを設けており、病気の後に登園・登校を再開する際には、医師が記入した「登園許可書」や「治癒証明書」の提出を求められることがほとんどです。したがって、保護者が「もう元気になったから」と自己判断で登園・登校させるのではなく、必ず一度、かかりつけの小児科医の診察を受けてください。医師が子どもの全身状態を評価し、「集団生活に支障なし」と最終的に判断して初めて、登園・登校が可能となります。

  • 5歳児のRSウイルス、その特徴的な症状とは

    医療

    RSウイルス感染症は、「乳幼児の冬風邪」の代表格として知られ、特に生後6ヶ月未満の赤ちゃんが感染すると、細気管支炎や肺炎といった重篤な呼吸器疾患を引き起こすことがあるため、非常に注意が必要な病気です。しかし、このウイルスは乳幼児だけでなく、幼児期の子どもたちにも広く感染します。5歳くらいの幼児がRSウイルスに初めて、あるいは再感染した場合、その症状はどのように現れるのでしょうか。多くの場合、5歳児がRSウイルスに感染した時の症状は、0歳や1歳の乳児期に比べて、比較的軽症で済むことが多いとされています。典型的な経過としては、まず、38度前後の発熱と、水のようなサラサラとした鼻水から始まります。これは、普通の風邪の症状と非常によく似ています。その後、数日経つと、咳が出始め、次第にその咳がひどくなっていくのが特徴です。咳は、乾いたコンコンとした咳から、痰が絡んだゴホゴホ、ゼロゼロといった湿った咳に変化していくことが多く、このしつこい咳が1週間以上続くことも珍しくありません。RSウイルスの特徴は、上気道(鼻や喉)の炎症だけでなく、気管支や細気管支といった、より下気道に炎症が及びやすい点にあります。そのため、5歳児であっても、喘息の既往がある子どもや、アレルギー体質の子ども、あるいは免疫力が低下している状態の子どもの場合は、症状が重症化するリスクがあります。特に、咳と共に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった、息を吐く時に異常な音が聞こえる「喘鳴(ぜんめい)」が現れた場合は、気管支が狭くなっているサインであり、注意が必要です。症状のピークは、発症から4~6日目頃に訪れることが多く、この時期に呼吸状態が悪化しやすいとされています。ほとんどの5歳児は、対症療法と自宅でのケアで自然に回復に向かいますが、重症化のサインを見逃さないためにも、保護者の注意深い観察が何よりも大切です。

  • 水疱瘡の症状、その典型的な経過とは

    医療

    水疱瘡(みずぼうそう)は、正式には「水痘(すいとう)」と言い、「水痘・帯状疱疹ウイルス」への初感染で発症する、非常に感染力の強い病気です。特に、ワクチン未接種の子どもによく見られますが、免疫がない大人も感染します。水疱瘡の症状は、非常に特徴的な経過をたどるため、その流れを知ることは、病気を正しく理解し、適切に対処する上で非常に重要です。まず、ウイルスに感染してから症状が出始めるまでの「潜伏期間」が、約2週間(10日~21日)あります。この間は全く無症状ですが、体の中ではウイルスが増殖を始めています。そして発症は、比較的軽い発熱(37~38度程度)と、全身の倦怠感から始まることが一般的です。発熱とほぼ同時に、あるいはその1~2日後から、特徴的な「発疹」が出現し始めます。この発疹こそが、水疱瘡を診断する上での最大の鍵となります。発疹は、最初は小さな赤いブツブツ(紅斑)として、主に体幹部(お腹や背中)や顔に現れます。そして、ここからの変化が非常にスピーディーです。赤い発疹は、わずか数時間のうちに、その中心部がぷくっと盛り上がり、涙のしずくのような、みずみずしい「水ぶくれ(水疱)」に変化します。この水疱は強いかゆみを伴い、やがて中心が少しへこんで、膿を持った「膿疱(のうほう)」へと変わっていきます。そして最終的には、それが破れて乾燥し、「かさぶた(痂皮)」となって治癒に向かいます。水疱瘡の最大の特徴は、この「紅斑→水疱→膿疱→痂皮」という様々な段階の発疹が、数日間にわたって次々と新しい場所に現れ、結果的に、体の同じ場所に、これらの“新旧”の発疹が、まるで混在するように同時に見られることです。これを「発疹の混在」と呼び、医師が水疱瘡を診断する際の決定的な所見となります。

  • 皮膚の発疹を伴う肩の痛みは皮膚科へ

    医療

    肩の痛みと共に、その周辺の皮膚にピリピリ、チクチクとした痛みや、赤い発疹、水ぶくれといった症状が現れた場合、その原因は関節や筋肉ではなく、皮膚と神経の病気である可能性が非常に高いです。この場合に、まず受診すべき診療科は「皮膚科」です。その代表的な疾患が、「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」です。帯状疱疹は、多くの人が子供の頃にかかる水ぼうそう(水痘)のウイルスが原因で起こります。水ぼうそうが治った後も、そのウイルスは体内の神経節に静かに潜伏し続けています。そして、加齢や疲労、ストレスなどで免疫力が低下した時に、潜んでいたウイルスが再び活性化し、神経を伝って皮膚に到達して、帯状疱疹として発症するのです。帯状疱疹は、体の片側の、一本の神経が支配する領域(皮膚分節)に沿って症状が出るのが大きな特徴です。肩の周辺は、首から腕へ向かう神経(頸神経や腕神経叢)が支配しているため、この領域に潜伏していたウイルスが活性化すると、肩から腕、あるいは胸にかけて、症状が現れます。最も特徴的なのは、その症状の経過です。まず、皮膚に発疹が現れる数日前から1週間ほど前に、その領域にピリピリ、チクチクとした神経痛のような痛みが先行します。この段階では、皮膚には何も異常がないため、筋肉痛や神経痛などと間違われやすいのです。そして、痛みが出始めてからしばらくすると、その場所に帯状に赤い発疹と、小さな水ぶくれが多数出現します。この水ぶくれは、強い痛みを伴い、やがて破れてかさぶたになり、治癒していきます。帯状疱疹の治療で最も重要なのは、早期診断と、抗ウイルス薬による早期治療の開始です。発疹が出てから72時間以内に抗ウイルス薬の内服を始めると、ウイルスの増殖を抑え、皮膚症状や痛みを軽くし、治癒までの期間を短縮することができます。治療の開始が遅れると、発疹が治った後も、数ヶ月から数年にわたって頑固な神経痛が残る「帯状疱疹後神経痛(PHN)」という、非常につらい後遺症に悩まされるリスクが高まります。したがって、体の片側に原因不明の痛みと、それに続く発疹が現れたら、自己判断せず、できるだけ早く皮膚科を受診することが極めて重要です。

  • 切り傷の正しい応急処置と、やってはいけないNG行動

    知識

    切り傷を負ってしまった時、医療機関を受診するまでの間、あるいは受診が不要な軽い傷の場合に、家庭でどのような応急処置をすればよいかを知っておくことは、感染を防ぎ、傷の治りを良くするために非常に重要です。正しい知識は、いざという時のあなたと家族を守る武器となります。【正しい応急処置の手順】①まず、落ち着いて傷口を洗浄する: 怪我をすると、つい焦ってしまいますが、まずは落ち着きましょう。そして、傷口を「水道水」で十分に洗い流してください。石鹸を使っても構いません。傷口についた砂や泥、細菌などの異物を、流水で物理的に除去することが、感染予防の第一歩です。多少しみて痛くても、ここが最も重要なステップです。消毒液(マキロンなど)は、正常な細胞も傷つけてしまい、かえって傷の治りを遅らせる可能性があるため、必ずしも必要ではありません。②次に、清潔なガーゼで圧迫止血する: 洗浄後、清潔なガーゼやハンカチ、タオルなどを傷口に直接当て、その上から手で強く、そして持続的に圧迫します。少なくとも5分間は、手を離さずに圧迫を続けてください。心臓より高い位置に傷口を挙げる(挙上)と、さらに止血効果が高まります。ほとんどの出血は、この圧迫止血でコントロールできます。③傷口を保護する: 出血が止まったら、傷口を保護します。近年推奨されているのは、傷口を乾燥させず、適度な潤いを保つ「湿潤療法(モイストヒーリング)」です。薬局で販売されている、ハイドロコロイド素材などの専用の絆創膏(キズパワーパッドなど)を使用すると、痛みが少なく、きれいに治りやすいとされています。【やってはいけないNG行動】①傷口をむやみに覗き込む・いじる: 傷口を何度も触ると、手についた細菌が侵入し、感染の原因となります。②消毒液を使いすぎる: 前述の通り、強い消毒液は、傷を治そうとする細胞まで殺してしまいます。洗浄が基本です。③粉末の薬や、効果の不明な民間療法を行う: アロエを貼る、粉薬を振りかけるといった行為は、異物となって感染のリスクを高めるだけで、全く効果はありません。④止血のために、指や腕の根元をきつく縛る(ターニケット): これは、手足が切断されそうなほどの大出血の場合に行う最終手段です。不適切な緊縛は、神経や組織に深刻なダメージを与えるため、絶対にやめてください。