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「日中の受診を検討」すべき蕁麻疹のサイン
家庭でのケアで様子を見ていても、蕁麻疹の症状が改善しない、あるいは少し気になる点がある場合は、翌日以降の、日中の診療時間内に、皮膚科か小児科を受診することを検討しましょう。夜間や休日に、慌てて救急外来に駆け込むほどの緊急性はないものの、一度医師に診察してもらい、適切な診断と治療を受けた方が良いケースです。日中の受診を検討すべきサインは、主に「症状の持続時間」と「かゆみの強さ」です。まず、蕁麻疹は通常、個々の発疹(膨疹)は数時間で消え、長くても24時間以内には跡形もなく消えるのが特徴です。しかし、一つの発疹が24時間以上同じ場所に留まっている場合や、古い発疹が消えても、次々と新しい発疹が別の場所に出てきて、全体として2〜3日以上、蕁麻疹が出続けている場合は、医師の診察を受けた方が良いでしょう。特に、このような蕁麻疹が6週間以上も続く場合は、「慢性蕁麻疹」と呼ばれ、原因の特定や長期的な治療計画が必要となることがあります。次に、子どもが「かゆみを非常に強く訴えている」場合です。かゆみのために、夜も眠れない、イライラして集中できないなど、日常生活に支障が出ている場合は、我慢させる必要はありません。医療機関を受診すれば、かゆみの原因となるヒスタミンの働きを抑える「抗ヒスタミン薬」の内服薬を処方してもらえます。これにより、つらいかゆみを効果的に和らげ、掻き壊しによる悪化を防ぐことができます。市販のかゆみ止め塗り薬もありますが、効果は限定的であることが多く、原因によっては適さない場合もあるため、特に広範囲に蕁麻疹が出ている場合は、内服薬の方がはるかに有効です。その他にも、「蕁麻疹の原因に心当たりがなく、不安である」「過去にも蕁麻疹を繰り返しており、原因を特定したい」といった場合も、専門医に相談する良い機会です。受診する際は、いつから、どこに、どのような発疹が出たか、そして蕁麻疹が出る前に食べたものや、行った場所などをメモしていくと、診察がスムーズに進みます。スマートフォンのカメラで、発疹が最もひどかった時の写真を撮っておくことも、非常に有用な情報となります。
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風邪で喉にブツブツができる原因とは
風邪をひいて喉が痛い時、鏡で口の中を覗いてみると、喉の奥に赤いブツブツや白いできものができていて、ぎょっとした経験はありませんか。多くの人はこれを「風邪が悪化したのかな」と考えがちですが、実はその「ブツブツ」は、単なる普通の風邪(感冒)ではない、特定の感染症のサインである可能性が高いのです。普通の風邪の多くは、ライノウイルスやコロナウイルス(新型コロナウイルスを除く)などが原因で、主に鼻や喉の上気道に炎症を起こします。症状は、喉の痛みや鼻水、咳が中心で、喉の粘膜が全体的に赤くなることはあっても、はっきりとしたブツブツができることは稀です。一方で、喉に特徴的なブツブツを形成するのは、主に「A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)」という細菌や、「エンテロウイルス属」のウイルス(コクサッキーウイルスなど)です。これらの病原体に感染した場合、それぞれ「溶連菌感染症」や「ヘルパンギーナ」、「手足口病」といった、普通の風邪とは区別されるべき病気を発症します。これらの病気は、症状の経過や治療法が異なるため、喉のブツブツに気づいた際には、その見た目や、他にどのような症状があるかを注意深く観察し、適切な医療機関を受診することが非常に重要です。例えば、ブツブツが喉だけでなく全身に広がったり、舌がイチゴのように赤くブツブツになったりすれば溶連菌感染症、喉の奥に白い水ぶくれができて激しく痛むならヘルパンギーナ、手や足にも発疹があれば手足口病、といったように、ブツブツは病気を見分けるための重要な手がかりとなります。
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蕁麻疹の原因、アレルギー性と非アレルギー性の違い
子どもの蕁麻疹の原因は、大きく分けて「アレルギー性」と「非アレルギー性」の二つに分類されます。どちらのタイプかを考えることが、適切な対応や、再発予防に繋がります。まず、「アレルギー性蕁麻疹」は、特定の物質(アレルゲン)に対して、体の免疫システムが過剰に反応することで起こります。アレルゲンが体内に入ると、マスト細胞という細胞から、ヒスタミンなどの化学伝達物質が大量に放出されます。このヒスタミンが、皮膚の血管を拡張させ、血液の成分(血漿)を血管の外に漏れ出させることで、赤みと盛り上がり(膨疹)、そして強いかゆみを引き起こすのです。原因となるアレルゲンとして最も多いのが、「食物」です。特に、卵、牛乳、小麦、そば、ピーナッツ、甲殻類(エビ・カニ)、果物などが代表的です。特定のものを食べてから、数分から2時間以内に蕁麻疹が出現するのが特徴です。その他、「薬物」(抗生物質や解熱鎮痛薬など)、「虫刺され」(ハチやアリなど)、「ラテックス(天然ゴム)」なども、アレルギー性蕁麻疹の原因となります。重症化すると、前述のアナフィラキシーショックを引き起こす危険性があるのが、このアレルギー性蕁麻疹です。一方、「非アレルギー性蕁麻疹」は、アレルギー反応を介さずに、様々な刺激が直接、あるいは間接的にマスト細胞を活性化させることで起こります。子どもの急性蕁麻疹の原因として、実は最も多いのが、この非アレルギー性のものです。その代表格が、「感染症」です。風邪や胃腸炎などのウイルスや細菌に感染した際に、体の免疫反応の一環として蕁麻疹が出ることがあります。また、日光を浴びることで起こる「日光蕁麻疹」、寒い空気に触れることで起こる「寒冷蕁麻疹」、温かいお風呂などで体温が上がることで起こる「温熱蕁麻疹」、皮膚をこすったり圧迫したりすることで起こる「機械性蕁麻疹」など、物理的な刺激が原因となる蕁麻疹も、このカテゴリーに含まれます。疲労やストレスが、蕁麻疹を誘発したり、悪化させたりすることも知られています。実際には、はっきりと原因が特定できない「特発性」の蕁麻疹が、全体の7割以上を占めるとも言われています。
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かかとの後ろ側が痛い、アキレス腱のトラブル
かかとの痛みが、足の裏側ではなく、かかとの「後ろ側」、ちょうどアキレス腱が付着しているあたりに生じる場合、それは「アキレス腱」そのものや、その周辺組織のトラブルが原因である可能性が高いです。アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)とかかとの骨(踵骨)をつなぐ、体の中で最も太くて強靭な腱です。歩いたり、走ったり、ジャンプしたりする際に、地面を蹴り出すための重要な役割を担っています。このアキレス腱周辺の痛みで、まず考えられるのが「アキレス腱付着部炎」です。これは、アキレス腱がかかとの骨に付着する部分で、使いすぎ(オーバーユース)による繰り返しのストレスによって、微細な損傷と炎症が生じる状態です。ランニングなどのスポーツ選手によく見られますが、普段あまり運動しない人でも、硬い靴を履いて長時間歩いたりすることで発症することがあります。症状は、運動の開始時に痛みが強く、体が温まると少し楽になるものの、運動後に再び痛みが強くなるのが特徴です。かかとの後ろ側を押すと、限局した強い痛みがあります。次に、「アキレス腱周囲炎」は、アキレス腱そのものではなく、腱を包んでいる「パラテノン」という薄い膜に炎症が起こる状態です。アキレス腱の周辺が腫れぼったくなり、動かすとギシギシとした感じ(轢音)がすることもあります。また、かかとの骨の後ろ側とアキレス腱の間には、「滑液包」という、潤滑油の入った袋があり、これがクッションの役割を果たしています。靴のかかと部分の硬い縁(ヒールカウンター)が、この滑液包を圧迫し続けることで炎症が起こるのが「アキレス腱滑液包炎」です。特に、女性が新しいパンプスなどを履いた時に起こりやすいです。治療は、いずれの疾患も、まずは原因となっている運動や動作を休止し、安静を保つことが基本です。痛みが強い時期には、アイシングや消炎鎮痛薬の内服・外用が有効です。そして、痛みが和らいだら、ふくらはぎの筋肉のストレッチングを丁寧に行い、アキレス腱への負担を減らすことが再発予防の鍵となります。
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かかとが痛い!考えられる原因と痛みのメカニズム
歩行や起立といった日常のあらゆる動作で、私たちの全体重を最初に受け止める重要なパーツ、それが「かかと」です。この小さな部位には、歩行時の着地の衝撃を吸収し、次の一歩を踏み出すためのバネとなる、精巧なメカニズムが備わっています。しかし、その分、かかとには絶えず大きな負担がかかっており、様々な原因によって痛みが生じやすい場所でもあります。かかとの痛みを引き起こす原因は、一つではありません。最も多いのは、足の裏にある「足底腱膜」という強靭な膜に炎症が起こる「足底腱膜炎」です。特に、朝起きて最初の一歩目に激痛が走るのが、この病気の典型的なサインです。また、かかとの骨そのものや、その周辺の脂肪組織、神経、アキレス腱などに問題が生じることもあります。例えば、成長期の子どもであれば、かかとの骨の成長軟骨に炎症が起こる「シーバー病(踵骨骨端症)」が考えられます。さらに、スポーツによるオーバーユース(使いすぎ)や、長時間の立ち仕事、あるいは加齢による組織の変性、体重の増加、クッション性の悪い靴の着用といった、日々の生活習慣や身体的な変化も、かかとの痛みを誘発する大きな要因となります。稀ではありますが、関節リウマチなどの全身性の炎症性疾患や、腰の神経の圧迫(坐骨神経痛)が、かかとに痛みを引き起こすこともあります。このように、かかとの痛みの背景には、様々な原因が潜んでいます。適切な対処や治療を行うためには、まず、自分の痛みがどのような特徴を持っているのか(いつ、どこが、どのように痛むのか)を把握し、その原因を正しく突き止めることが、解決への第一歩となるのです。
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蕁麻疹の予防、原因がわからない時の日常生活の注意点
子どもの蕁麻疹、特に原因がはっきりしない特発性の蕁麻疹を繰り返す場合、保護者としては、何とかして再発を防いであげたいと思うものです。原因が特定できなくても、日常生活の中で、蕁麻疹の「悪化因子」を避け、皮膚を健やかな状態に保つための工夫をすることで、症状をコントロールしやすくなります。まず、基本となるのが「規則正しい生活と、体調管理」です。睡眠不足や疲労、精神的なストレスは、自律神経や免疫のバランスを乱し、蕁麻疹を誘発したり、悪化させたりする最大の要因です。早寝早起きを心がけ、十分な睡眠時間を確保しましょう。日中は、適度に体を動かして、ストレスを発散させることも大切です。次に、「食事」についてです。特定の食物アレルギーが原因でない限り、厳格な食事制限は必要ありません。むしろ、栄養バランスの取れた食事を、規則正しく摂ることが、健康な体作りの基本です。ただし、一般的に、ヒスタミンを多く含む食品(新鮮でない魚、ほうれん草、トマト、チョコレートなど)や、ヒスタミンの放出を促す食品(豚肉、タケノコ、香辛料など)は、症状を悪化させる可能性があるため、蕁麻疹が出ている時は、摂りすぎに注意すると良いでしょう。また、「皮膚への刺激を避ける」ことも重要です。衣類は、チクチクするウールや化学繊維は避け、肌触りの良い綿素材で、締め付けの少ない、ゆったりとしたデザインのものを選びましょう。体を洗う際は、ナイロンタオルでゴシゴシこすらず、低刺激性の石鹸をよく泡立てて、手で優しく洗うようにします。入浴は、熱いお湯に長く浸かると、体温が上昇してかゆみが強くなるため、ぬるめのシャワーで短時間で済ませるのがお勧めです。そして、何よりも大切なのが「掻かない、掻かせない」ことです。掻き壊しは、症状を悪化させるだけでなく、とびひなどの二次感染の原因にもなります。子どもの爪は常に短く切り、清潔に保ちましょう。かゆみが強い時は、冷たいタオルで冷やしたり、医師から処方された抗ヒスタミン薬をきちんと服用したりして、かゆみの悪循環を断ち切ることが、穏やかな状態を保つための鍵となります。
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子どもの蕁麻疹、受診の目安と診療科
ある日突然、子どもの体に、蚊に刺されたような、赤くて盛り上がった発疹(膨疹)がいくつも現れる。強いかゆみを伴い、地図のように広がったり、出たり消えたりを繰り返す。これは、多くの子どもが経験する皮膚の病気、「蕁麻疹(じんましん)」の典型的な症状です。その原因は、特定の食べ物や薬によるアレルギー、ウイルス感染、虫刺され、皮膚への物理的な刺激など、非常に多岐にわたります。ほとんどの場合、蕁麻疹は数時間から1日以内に自然に消える一過性のもの(急性蕁麻疹)であり、命に関わることは稀です。しかし、中には重篤なアレルギー反応のサインであったり、何らかの病気が隠れていたりする可能性もあります。そのため、保護者としては、「このまま様子を見ていて良いのか、それとも病院に連れて行くべきか」という受診の目安を知っておくことが非常に重要になります。まず、子どもの蕁麻疹で受診すべき診療科は、皮膚の専門家である「皮膚科」または、子どもの病気全般を診てくれるかかりつけの「小児科」です。どちらの科でも、適切な初期対応が可能です。受診を判断する上で最も重要なポイントは、蕁麻疹以外の症状、特に「呼吸器症状」や「消化器症状」を伴っているかどうかです。もし、蕁麻疹と共に、息が苦しそう、顔色が悪い、ぐったりしているといった症状が見られた場合は、アナフィラキシーという緊急性の高い状態の可能性があるため、様子を見ずに直ちに救急病院を受診するか、救急車を呼ぶ必要があります。この記事シリーズでは、蕁麻疹の症状のレベル別に、家庭での対処法と、医療機関を受診すべき具体的な目安について詳しく解説していきます。
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RSウイルスの予防法、5歳児と家族ができること
現在、RSウイルス感染症に対して、一般的な予防接種(ワクチン)は実用化されていません。(ただし、早産児や特定の基礎疾患を持つ乳幼児を対象とした、重症化予防のためのモノクローナル抗体製剤(パリビズマブ)の注射はあります。)したがって、5歳の子どもと、その家族が感染から身を守るためには、日々の地道な感染予防策を徹底することが、唯一かつ最も重要な方法となります。RSウイルスの主な感染経路は、咳やくしゃみなどのしぶきに含まれるウイルスを吸い込む「飛沫感染」と、ウイルスが付着した手で目や鼻、口に触れることによる「接触感染」です。これらの感染経路を断つことが、予防の基本です。まず、最も効果的なのが「石鹸と流水による手洗い」です。子ども自身はもちろんのこと、周りの大人も、外出先から帰宅した時、食事の前、トイレの後など、こまめに手洗いを行う習慣をつけましょう。指の間や爪先、手首まで、30秒以上かけて丁寧に洗うことがポイントです。次に、「アルコールによる手指消毒」も有効です。RSウイルスは、アルコール(エタノール)で不活化されるため、手洗いがすぐにできない状況では、アルコールベースの手指消毒剤を活用しましょう。また、流行シーズン(主に秋から冬)には、「人混みを避ける」ことも重要です。特に、下の子にまだ0歳や1歳の乳児がいる場合は、お兄ちゃんやお姉ちゃんが、保育園や幼稚園、あるいはショッピングモールなど、人が多く集まる場所でウイルスをもらってきて、家庭内に持ち込んでしまうケースが非常に多いです。可能な範囲で、不要不急の外出は控えるのが賢明です。家庭内では、「おもちゃの消毒」も心がけましょう。子どもたちが日常的に触れるおもちゃや、ドアノブ、テーブルなどは、ウイルスが付着しやすい場所です。市販のアルコール除菌スプレーや、塩素系の消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)を薄めたもので、こまめに拭き掃除をすると、接触感染のリスクを減らすことができます。「咳エチケット」も大切です。咳やくしゃみが出る場合は、マスクを着用するか、ティッシュや腕の内側で口と鼻を覆うように、子どもに教えましょう。これらの基本的な感染対策を家族全員で実践することが、RSウイルスの流行から子どもたちを守るための、最も確実な防波堤となるのです。
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手足の深い切り傷、機能障害を伴うなら「整形外科」
包丁で指を深く切ってしまった、あるいはガラスの破片が腕に突き刺さった。このような、手や足の「深い」切り傷で、特に注意が必要なのは、皮膚の下にある重要な組織、すなわち「神経」「腱」「血管」を損傷している可能性です。そして、これらの組織の損傷を伴う切り傷の治療を専門とするのが、「整形外科」です。整形外科は、骨や関節だけでなく、四肢(手足)を構成する全ての組織、つまり筋肉、腱、靭帯、神経、血管の病気や怪我を扱う専門家です。手足の切り傷で、以下のような症状が見られる場合は、迷わず整形外科を受診してください。まず、最も重要なサインが「神経損傷」の兆候です。具体的には、「傷口よりも先の部分(指先など)の感覚が鈍い、しびれている、触っても感じない」といった感覚障害や、「指がうまく動かせない、特定の動きができない」といった運動麻痺です。例えば、手のひら側を切って、指が曲げられなくなったら屈筋腱の損傷、手の甲側を切って、指が伸ばせなくなったら伸筋腱の損傷が疑われます。これらの神経や腱の損傷は、自然に治ることはなく、放置すると、指の機能に永続的な後遺症を残してしまう危険性があります。そのため、顕微鏡を使いながら、髪の毛よりも細い糸で神経や腱を縫い合わせる「マイクロサージャリー」という、非常に専門的で繊細な手術が必要となります。整形外科、特に「手の外科」や「足の外科」を専門とする医師は、これらの手術のエキスパートです。次に、「血管損傷」の兆候にも注意が必要です。傷口から、拍動性の鮮血(動脈性出血)が噴き出すように出ている場合や、傷口よりも先の部分が、白っぽく、冷たくなっている場合は、主要な動脈が損傷している可能性があります。これも、緊急の血管吻合手術が必要となる状態で、放置すれば組織が壊死してしまう危険性があります。整形外科では、まず傷の深さを評価し、神経や腱の機能を入念にチェックします。そして、これらの重要な組織の損傷が疑われる場合は、手術室で、麻酔をかけた上で、傷口を広げて内部を詳しく観察し(創内検索)、損傷があれば、その場で修復手術を行います。手足の機能回復を最優先に考えるなら、整形外科への受- chíは不可欠です。
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「夜間・休日でも受診を」アナフィラキシーの危険な兆候
子どもの蕁麻疹で、最も警戒しなければならないのが、重篤なアレルギー反応である「アナフィラキシー」の初期症状として、蕁麻疹が現れているケースです。アナフィラキシーは、アレルゲン(アレルギーの原因物質)が体内に入ってから、数分から数時間以内に、複数の臓器に全身性の激しいアレルギー症状が起こる、命に関わる非常に危険な状態です。そのため、以下に挙げるような、蕁ímav疹以外の「危険な兆候」が一つでも見られた場合は、絶対に様子を見ず、夜間や休日であっても、直ちに救急外来を受診するか、ためらわずに救急車(119番)を呼んでください。アナフィラキシーを疑うべき最も重要なサインは、「呼吸器系の症状」です。具体的には、「息が苦しそう、呼吸が速い」「咳が止まらない、声がかすれている」「犬が吠えるような咳(犬吠様咳嗽)や、息を吸う時にゼーゼー、ヒューヒューという音がする(喘鳴・ストライダー)」といった症状です。これらは、喉や気管の粘膜が腫れあがり、気道が狭くなっていることを示唆しており、窒息の危険性がある緊急事態です。次に、「循環器系の症状」です。「顔色が悪く、唇が青紫色になっている(チアノーゼ)」「ぐったりしていて、意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が鈍い」「脈が速くて弱い」といった症状は、血圧が急激に低下し、ショック状態に陥っているサインです。また、「消化器系の症状」も、重要な兆候です。「繰り返し吐き続ける」「我慢できないほどの激しい腹痛を訴える」といった症状が、蕁麻疹と同時に現れた場合も、アナフィラキシーの一部である可能性があります。さらに、蕁麻疹が、皮膚だけでなく、「まぶたや唇、顔全体が、パンパンに腫れあがる(血管性浮腫)」といった、粘膜の強い腫れを伴う場合も、気道の腫れに移行する危険性があるため、注意が必要です。これらの症状は、特定の食べ物(卵、牛乳、小麦、そば、ピーナッツなど)を食べた後や、ハチに刺された後、薬を飲んだ後などに現れることが多いです。子どもの様子が「いつもと違う」「何かおかしい」と保護者が感じた直感を信じ、迅速に行動することが、子どもの命を救うことに繋がります。