足の親指(母趾)の付け根の関節が痛む場合、特に考慮すべき代表的な病気が二つあります。一つは、関節の変形が原因である「外反母趾」、もう一つは、代謝異常が原因で起こる「痛風発作」です。この二つは原因が全く異なるため、正しい診断が不可欠です。まず、「外反母趾」は、足の親指が人差し指の方へ「く」の字に曲がり、付け根の関節が内側に突き出して、そこに痛みや腫れ、赤みが生じる状態です。この突き出した部分が靴に当たって摩擦されることで、さらに炎症が悪化し、バニオンと呼ばれる滑液包炎を起こして、強い痛みを引き起こします。主な原因は、つま先が細くヒールの高い靴の常用ですが、遺伝的な要因や扁平足なども関与しているとされています。痛みは、歩行時や靴を履いている時に強く感じられます。診断と治療は「整形外科」が専門です。レントゲンで変形の角度を測定し、重症度を評価します。治療は、まず靴の指導が基本です。幅の広い、つま先にゆとりのある靴に変えることが重要です。また、外反母趾用のサポーターや、足指の間に挟む装具、アーチをサポートするインソールなどを用いた保存的治療が行われます。痛みが強い場合は、消炎鎮痛薬が処方されます。これらの治療で改善しない場合や、変形が高度で日常生活に大きな支障がある場合には、骨を切って角度を矯正する手術(骨切り術)が検討されることもあります。一方、「痛風発作」は、ある日突然、何の前触れもなく、親指の付け根の関節が激しく痛みだし、赤くパンパンに腫れあがるのが特徴です。その痛みは、「風が吹いても痛い」と表現されるほど激烈で、歩くことも困難になります。これは、血液中の尿酸値が高い状態(高尿酸血症)が続き、関節内に溜まった尿酸の結晶が剥がれ落ちることで、急性の炎症反応が引き起こされる病気です。発作時の激しい痛みを抑えるためには、整形外科やかかりつけの「内科」を受診し、消炎鎮痛薬などを処方してもらう必要があります。そして、痛みが治まった後は、高尿酸血症そのものの治療が必要となり、これは主に内科やリウマチ科が担当します。尿酸値を下げる薬の内服や、食生活の改善が中心となります。
【親指の付け根】腫れと痛み、外反母趾と痛風発作を疑う